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『牛久』トーマス・アッシュ監督 日本人の「病」をえぐり出す驚愕のドキュメンタリー【Director’s Interview Vol. 186】

©Thomas Ash 2021

『牛久』トーマス・アッシュ監督 日本人の「病」をえぐり出す驚愕のドキュメンタリー【Director’s Interview Vol. 186】

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使命感に突き動かされ制作



Q:ドキュメンタリーの制作に入る際は、題材をどんな風に選んでいるんですか? 


トーマス:私は撮りたくて撮っているわけではないんです。「やらなければならない」という使命を感じるから撮るんです。目の前にある問題を、このまま見なかったことにできない、素通りできないと。


Q:その人や事実に出会ってしまったら、やらざるを得ない、ということですか。


トーマス:そういうことです。そして作品を作るのは、観客が「問題」を知ることで、何かしなきゃならない気持ちになることを期待しているからです。要は「そんなこと知らなかった」って言えないようにしたいんです。知ってしまうと「何かしなくちゃ」と思うのが普通なので。


Q:本当は知らない方が楽なことが多いですよね。


トーマス:楽ですよ、全然。でも知らない状態には二度と戻れません。



『牛久』©Thomas Ash 2021


Q:今までトーマス監督が撮ってきた題材は、監督自身が探して見つけたものというよりは、被写体のほうから自然と近づいてきて、出会ってしまったものばかりなんですか?


トーマス:はい。


Q:私はテレビの制作をやっているので、まずはネタを探すことからスタートする感覚が常識のように染みついています。


トーマス:会社員として新しい番組を作らないと給料がもらえない、という状態であればネタを探すしかないでしょう。でも私にとってドキュメンタリーは仕事ではありません。ライフワークなんです。そこがちょっと違うと思います。実は前作『おみおくり~Sending Off~』(19)を作ったあと、ちょっと休憩して、ドキュメンタリーから離れて本を書こうと思っていたんです。でも入管の問題を知ってしまって、作ることになった。もう知らないうちに映画を作っていた、という感覚ですね。


Q:では、今後の活動も決まっていないわけですね。


トーマス:神様が私をどういうふうに利用してくれるのか、私にはわかりませんが、神様の言葉を待ちます。それに従って行動するしかないですね。



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監督・撮影・編集:トーマス・アッシュ 

1975 年生まれ。アメリカ出身。最初の長編ドキュメンタリー『the ballad of vicki and jake』(06 年)が、スイスのニヨン国際ドキュメンタリー映画祭(Visions du Réel)で最優秀新人監督賞を受賞。2000 年より日本に拠点を移し、原発事故後の福島でも、子どもたちの甲状腺検査や生活にスポットライトを当てた『A2-B-C』はじめ、『グレーゾーンの中』 (12 年)などの作品を製作。今回の『牛久』では、ドイツ 2021 ニッポン・コネクションにて、 「ニッポン・ドックス賞(観客賞)」、韓国 DMZ 国際ドキュメンタリー映画祭アジア部門 「アジアの視点(最優秀賞)」、オランダカメラジャパン「観客賞」を受賞。



取材・文: 稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)




『牛久』

2月26日よりシアター・イメージフォーラム、MOVIXつくば他全国順次公開

配給:太秦

©Thomas Ash 2021

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