©Thomas Ash 2021
『牛久』トーマス・アッシュ監督 日本人の「病」をえぐり出す驚愕のドキュメンタリー【Director’s Interview Vol. 186】
あからさまな暴力を映し出した映像
Q:本作には、牛久の入管施設に収容された国籍の異なる9人が出てきます。監督はどのようにして彼らと出会ったのでしょうか。
トーマス:牛久では面会アプリケーションというものに、面会したい人の名前と国籍を記入して提出します。もちろん最初私は誰も知り合いがいないので、まず支援活動をしている友人に何人か紹介してもらい面会しました。そして、面会した人に、映像という手段を使って、ご自身が今置かれている状況と、ご自身の声を外部に届けたいかどうかを尋ねました。面会を重ねるうちに、他にも面会を希望している人がいると紹介されて、多くの人たちと出会うことになりました。
Q:印象的だったのは「仮放免」という制度の不可解さです。例えば仮放免になったけれど2週間で施設に戻された、といった経験も語られます。
トーマス: 私も入管に聞きたいです、「何を考えているの?」って。2週間だけの仮放免が実際に制度として明確にルール化されたものなのか、私にはわかりません。それはやはり収容者のハンガーストライキに対応するためだと思います。出所させないと、何も食べないハンストを死ぬまで続ける人がいるので、入管はそれを防ぎたいのだと思います。一時期的に出所させて、外の生活で健康な状態に戻ったら、また収容しようということなのかも知れません。
『牛久』©Thomas Ash 2021
Q:収容者の一人が何人もの係官に暴力的に制圧される映像が衝撃的で恐ろしいです。あの映像は入管サイドが撮影したものだと思いますが、どのように入手されたのでしょうか。
トーマス:暴力を受けた本人が裁判を起こして、弁護士が証拠として開示させたものです。
Q:入管サイドは、どんな意図で撮影しているのでしょうか。
トーマス:これは、あくまで私の見解ですが、おそらく「自分たちは悪いことをやっていません」という証拠にするためだと思います。要は「収容者が暴れるから暴力的に制圧しないといけなかった」という証拠になると考えているのです。自分たちが悪いと思っていないから、堂々と映像を撮って残しているのでしょう。
Q:あの映像は、まるで拷問のように見えます。
トーマス:入管の職員が、収容者の顎下に親指を食い込ませていますよね。おそらく相手が痛く感じるように意図的にやっていて、それで暴れるように仕向けているのだと思います。