おとぎ話とリアリティ
Q:映画のキャッチコピー「どこにでもある大人のおとぎ話」という言葉がしっくりくる世界観でした。その辺りは意識されていますか?
平山:隕石にあたる確率は1億分の1。そこから始まるおとぎ話めいた映画ですが、僕はそれほどおとぎ話という印象はなかったんです。主人公ふたりが出会う確率は世界の人口を考えると約80億分の1ですしね。おとぎ話と言うよりも、身近な話で世界を作ることを意識しましたね。
Q:「おとぎ話」と「身近なリアリティ」の塩梅が絶妙で、観ている大人たちはどっぷり感情移入してしまうと思います。
平山:この歳になってあまりバタバタもしたくないし、バタバタしたものも観たくない。それでも企画当初は「五十路男女のキラキラ映画にしようぜ」って言っていたような気がします(笑)。
『ツユクサ』©2022「ツユクサ」製作委員会
Q:長く生きていると色んなことがあるなぁと、映画からすごく伝わってきます。
平山:そうありたいと思いますね。男と女の恋愛話となると、どうしてもその結果が気になるじゃないですか。でもハッピーエンドになれば良いというわけでもない。忘れた頃に「色んなことがあったなぁ」となるのが良いのかなと。
Q:映画に出てくる「断酒の会」のエピソードも面白かったです。実は断酒してない人が結構いるという(笑)。
平山:実際に練馬にある断酒の会に見学に行きました。断酒の会というのはひとつじゃなくて色んな形があるんです。その練馬の会は「酒をやめるために集まる会」ではなく、「今、酒をやめようとしている自分を見てもらう会」なんだと。そこにいる人たちは、こんなに頑張っている自分の話を聞いて欲しいと。そういう会なんです。想像していた会とは全く違ってて面白かったですね。
Q:色んな事情を抱えた人たちが集まっている感じがして、大人ってこういう感じだよなぁとリアリティがありました。
平山:あのシーンは、予算の都合上プロデューサーたちがエキストラとして出てるんです。だから本当に色んな事情を抱えていると思いますよ(笑)。