フィルムからデジタルという転換点
Q:『マリアの胃袋』(90)で監督デビューされてから30年以上が経ちますが、これまで継続的に、しかもエンターテインメント大作映画を手掛けられてきました。日本映画界の製作環境などはどのように変化してきたと感じますか?
平山:それはもう「フィルムからデジタル」この一点につきます。デジタル配信も始まって、もはや映画館ってなくなるんじゃないかと思うくらいです。携帯でも映像が撮れる時代になり、普通の人たちにとっても映像が身近になりました。でもプロとアマチュアの差は歴然とあると思っています。今回は大泉の撮影所で撮影させてもらったのですが、そこにはプロがいっぱいいました! プロの技術を未来につないでいこうとしていて、とても嬉しかったですね。
『ツユクサ』©2022「ツユクサ」製作委員会
Q:フィルムからデジタルになったことを監督自身はどう捉えていますか。
平山:もう昔には戻らないですからね。分かってはいますが正直まだ馴染めないです。時代劇でオープンセットを組むよりもCGで合成した方がはるかにコストダウンになりますが、オープンセットとグリーンバックでは演技が全然違うんです。また、夜に走るシーンを撮ろうとして、安全面の問題から昼間に撮って夜の色調に調整することもあるんですが、どうしても夜に走っているようには見えない。芝居の質も含めて色々と変わってくることもある。その辺を大事に考えないと映画は衰弱していきます。
Q:最後の質問です。平山監督が影響を受けた映画監督や作品を教えてください。
平山:スタンリー・クーブリックがすごく好きですね。あとは藤田敏八さん。パキ(藤田敏八)さんの何となくいい加減な感じがすごく良いですね(笑)。
僕は映画を観て育ちましたが、黒澤明じゃなくて三船敏郎を観に行っているんですよ。ジョン・フォードじゃなくてジョン・ウェインを観に行っているんです。スクリーンの中で動く俳優さんがどう魅力的に映るかを、一番大事にしていきたいですね。
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監督:平山秀幸
1950年生まれ。福岡県出身。『マリアの胃袋』(90)で監督デビュー。『ザ・中学教師』(92)で日本映画監督協会新人賞を受賞したのち、『学校の怪談』(95、96、99)シリーズが大ヒット。また『愛を乞うひと』(98)で第22回モントリオール世界映画祭国際批評家連盟賞、さらに第22回日本アカデミー賞では最優秀作品賞と最優秀監督賞を獲得するなど、その他にも手掛けた作品は国内外で高く評価される日本映画界を代表する監督。近年も『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』(19)で、第43回日本アカデミー賞の優秀監督賞と優秀脚本賞を受賞し、映画への製作意慾はとどまるところを知らない。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『ツユクサ』
4月29日(金・祝)全国公開
配給:東京テアトル
©2022「ツユクサ」製作委員会