1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『ツユクサ』平山秀幸監督 指示はしない。俳優が持ってくる空気をどう撮るか【Director’s Interview Vol.202】
『ツユクサ』平山秀幸監督 指示はしない。俳優が持ってくる空気をどう撮るか【Director’s Interview Vol.202】

©2022「ツユクサ」製作委員会

『ツユクサ』平山秀幸監督 指示はしない。俳優が持ってくる空気をどう撮るか【Director’s Interview Vol.202】

PAGES


映画の色を最初から決めつけない



Q:美術やロケ地、アングルなど、画面の密度・情報量が少ないことも今回の世界感につながっていると思いました。


平山:小林さんの住んでいるアパートに関しては、生活感を作りつつもなるべく引き算しています。ロケ地に関しては綺麗な海が欲しいというイメージがあり、最初は四国の今治でやろうとしたのですが、西伊豆で水門のある風景を見たときに、そこで初めて映画のメインストリートが見えた気がしました。


Q:監督のお話を伺っていて思うのは、スタッフ・キャスト問わず、皆に任せて良いところを引き出していくという感覚です。それは監督ご自身の演出として、昔からのスタイルなのでしょうか。


平山:スタッフ・キャストともいろんなことを話しますが、こちらから押し付けるようなことはしないですね。逆立ちができない子に無理に逆立ちはさせないんです。変な言い方ですが、いいものを出してくれるスタッフが居て、いいものを表現してくれる俳優さんが居て、美味しいところだけ僕が持っていって作品が成立すれば良いなと思っています(笑)。



『ツユクサ』©2022「ツユクサ」製作委員会


Q:頭の中の設計図にハメていくような感じはないのですね。


平山:今回は海の風景だけは頭の中にありましたが、それ以外のイメージ、例えばキャラクターの登場の仕方やツユクサの吹きかたなどは全く頭の中にありませんでした。いつもホン読みはしないんです。衣装を着ないで風景のない場所でやってもしょうがない。それよりも実際の場所に行って衣装を着て撮影前のリハーサルに時間をかけます。


Q:では「これは違うな」と思うようなことはあまり無いですか?


平山:そういうときは「2パターン撮っておこう」となりますね。俳優さんから「こうじゃないですか?」って言われると「そっちも撮っておこう」と。要するに手探りなんです。これはこういう色の映画なんだと最初から決めつけない。左見たり右見たり、上見たり下見たりしながら「こんなのが出来ちゃったね」という感じなんです。


Q:90分というタイトな時間も心地よかったんです。監督の作品の中では短い方ではないですか?


平山:最近は個人的に長い映画が耐えられないんです(笑)。昔は映画って2本立てでしたよね。80分でも2本立てだから良かったのですが、今はほとんどが1本での上映なので、あまりに短い映画だと損したと思われかねない。そのリミットが90〜95分くらい。台本の段階から「これはひょっとしたら短いかな」という印象はありましたが、無理して伸ばしたり縮めたりすることもなく、あの長さに落ち着いたんです。


Q:基本的には最初の台本のままなんですね。


平山:長さ的には何も変わってないです。小林さん、平岩さん、江口さんの女性3人組のやり取りのテンポもあれで良かったと思うし、あれを時間をかけてのんびりやってもらうことでもないだろうなと。


Q:女性3人組のやりとりはすごく自然で面白かったのです。セリフなども台本のままですか?


平山:はい。台本に全部書いてありましたね。一つだけアドリブがあったのは、セクシーな下着を見た小林さんが「眼帯?」っていうセリフだけです。あれはメチャメチャ面白くて、現場は爆笑でしたね(笑)。




PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『ツユクサ』平山秀幸監督 指示はしない。俳優が持ってくる空気をどう撮るか【Director’s Interview Vol.202】