指示はしない。求めるのは自然体
Q:小林聡美さん・松重豊さんをはじめ、芸達者なキャストが揃った盤石の布陣でした。それぞれどのような経緯でキャスティングは進められたのでしょうか。
平山:松重さんとは『レディ・ジョーカー』(04)でご一緒したことがありましたが、小林さんとはお仕事したことがなく、『閉鎖病棟 ーそれぞれの朝ー』(19)で初めてご一緒しました。彼女の持つ、まるで水のような清潔な感じがとてもいいなと思い、改めて今回の役をお願いしました。
Q:小林さん・松重さんとは、キャラクターについてどんなお話をされたのでしょうか。
平山:ほとんどしてないですね。松重さんの髪の毛の色をどうするかということぐらいかな。お二人は台本に書かれている空気や世界をちゃんと理解されていたので、こちらから「こうしてください」と指示するようなことは全くなかったです。現場では、彼らが運んでくる“空気”をどう撮るかということだけでした。
Q:それは平岩紙さんや江口のりこさんなど、脇を固めるキャストも同じだったのでしょうか。
平山:はい。だから女性3人組(小林さん、平岩さん、江口さん)には演出なんてしてないです(笑)。「どこまで行くの君たちは?」みたいな感じでしたね(笑)。
『ツユクサ』©2022「ツユクサ」製作委員会
Q:渋川清彦さんも良い味を出されていました。渋川さんが怖くない役をする映画は、ハズレがない印象があります(笑)。
平山:(笑)渋川さんも平岩さんも『閉鎖病棟 ーそれぞれの朝ー』に患者役で出てるんです。それが今度は夫婦役でしょ。偶然だったのですが変な因縁を感じましたね。そうか、この二人は前、患者だったよなぁって(笑)
Q:子役の斎藤汰鷹くんも自然でとても良かったです。
平山:まさに自然体ですね。こっちが子供を理解しようと思って演出すると、絶対失敗するんです。その子がその時にどう思うかということを第一に考える。
Q:斎藤くんのナレーションも印象的でしたが、最初から入れることは決まっていたのでしょうか。
平山:台本の段階から決まっていました。この映画は子供目線で語ろうと最初から決めていたんです。
Q:小林さんと斎藤くんの相性もバッチリでしたね。
平山:クランクインして最初の撮影は、小林さんが「こうへいくーん、あそびましょう」というカットだったのですが、スタッフがそれを見て「うん、いい!」ってなったんじゃないかな(笑)。もう理屈は要らなかったね。