『オールド・ボーイ 4K』パク・チャヌクと伝説の漫画原作者・狩撫麻礼の奇跡的な出会い　原作漫画編集者 平田昌幸氏 インタビュー

伝説の原作者から学んだ編集者としての心得

Q：平田さんは編集者として初めて担当したのが狩撫さんだったそうですが、初対面の時の狩撫さんはどんな方でしたか。

平田：「君は今25歳か。俺は50歳だから君が70の時に俺は95だから大体同い年だ。だから同い年と思って気を遣わないようにな」って言われました。「そいうものなのか」と思って本当にそうしていました(笑)。楽しかったですね。毎週原稿をもらいに行くんですけど、その日が楽しみでしょうがない。ずっと酒飲んで。途中でカラオケ行って、ラーメン屋へ行って。で、また仕事場に戻って延々と飲んでいました。

Q：狩撫さんはどんな作家の影響を受けていたのでしょうか。

平田：白土三平さんや、つげ義春さん。ガロの作家さんたちですね。あとボブ・マーリーですよね(笑)。　※狩撫麻礼のペンネームは、本人がレゲエに傾倒していたことから「カリブ海」と「ボブ・マーリー」から発想された。

Q：漫画原作者としての、狩撫さんはどんなタイプの方だったんでしょうか。

平田：基本を大事にする方でした。だから編集者は漫画原作者になりたいという人に、お手本として狩撫さんの原作を読ませる編集者が多いんです。他の原作者は我流だったり、ネーム※を前提としていないものだったりする。対して狩撫さんの原作は漫画にすることを前提にしたものでした。（※ネーム：マンガの展開をコマ割りをして構成した下描き）

Ｑ：狩撫さんの原作はト書きも少なく、とても読みやすいと感じます。

平田：それが大切な部分です。全部指示してしまうと、漫画家がつまらなく感じるので、表現の余白を残すんです。「ここは漫画家に任せた」という部分が、原作を読むと分かる。でも指示するべき部分はすごく細かく指示する。狩撫さんは若いころ、小池一夫さんの劇画村塾で漫画の作り方を学んでいたので、その影響が大きいと思います。

Ｑ：狩撫さんとの仕事は、平田さんの編集者としての活動に、どんな風に生きていますか。

平田：漫画家が一番描きたいものは何か？というのを引き出す作業を一番大事にすることです。売れる話を作るよりも、まずその人が一番面白いと思うものを作る。その後、作品をどう売るかという順番で考えます。それはすごく意識しています。

編集者って大抵最初についた作家さんの型にハマって、その人が師匠みたいになるんです。そこで教わるのはテクニックだけではなく、「作家とは何か」ということを学ぶんです。私にとって、そういう存在が狩撫さんでした。だから漫画家さんとは、ストーリーを話し合うだけでなく、色んな事を話して、この人の核は何なのかという事を探って、そこから漫画を作っていく作業をしています。

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『オールド・ボーイ』原作漫画 担当編集者：平田昌幸

現在はwebアクションで小骨トモ『神様お願い』、石川浩司＆原田高夕己『「たま」という船に乗っていた』、高橋聖一『われわれは地球人だ！』、福満しげゆき『ひとくい家族』等を担当。過去の主な担当作は押見修造『ぼくは麻理のなか』、田亀源五郎『弟の夫』、櫻井稔文『絶望の犯島』、吉本浩二『日本をゆっくり走ってみたよ』等。

取材・文：稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー　マンガに革命を起こした男』（WOWOW）『たけし誕生　オイラの師匠と浅草』（NHK）『師弟物語～人生を変えた出会い～【田中将大×野村克也】』（NHK BSプレミアム）。

『オールド・ボーイ 4K』

5月6日（金）全国ロードショー

配給：KADOKAWA

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