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『シング・ア・ソング!〜笑顔を咲かす歌声〜』ピーター・カッタネオ監督 “悲しみ”を映像で見せるのは難しい【Director’s Interview Vol.208】

© MILITARY WIVES CHOIR FILM LTD 2019

『シング・ア・ソング!〜笑顔を咲かす歌声〜』ピーター・カッタネオ監督 “悲しみ”を映像で見せるのは難しい【Director’s Interview Vol.208】

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愛する人を戦地に送り出す。そんな宿命を背負わざるをえない軍人の妻たち。悪い知らせが届かないことを祈ることしかできない毎日の中、互いに支え合い前向きに生きるため、彼女たちが始めたのは合唱団だったーー。実話を元にしたこの物語、映画化したのは『フル・モンティ』(97)でアカデミー賞にノミネートされたピーター・カッタネオ監督。描く舞台が軍の基地というシリアスな状況にも関わらず、笑って泣いて心に染みる物語をきっちりとまとめる手腕はさすがだ。


約30年で監督作が6本という、意外と寡作なピーター・カッタネオ監督。今回話を伺えたのは貴重な機会だったかもしれない。



『シング・ア・ソング!〜笑顔を咲かす歌声〜』あらすじ

愛する人を戦地に送り出し、最悪の知らせが届くことを恐れながらイギリス軍基地に暮らす軍人の妻たち。大佐の妻ケイト(クリスティン・スコット・トーマス)は、そんな女性たちを元気づけ、共に苦難を乗り越えるための努力を惜しまないが、その熱意は空回りするばかり。そんな中、何気なく始めた“合唱”に、多くの女性達が笑顔を見せ始める。女性達のまとめ役リサ(シャロン・ホーガン)も、かつて慣れ親しんだキーボード・ピアノをガレージから引っ張り出し、積極的に関わり始めるが……。


Index


感情の移ろいに音楽が影響する物語



Q:この物語のどこに惹かれて監督を引き受けたのでしょうか。


カッタネオ:私にオファーが来たのは、脚本ができる前の企画段階でした。キャラクターの感情の移ろいに音楽が大きく影響する物語となっていて、すぐにやりたいと思いましたね。舞台が軍の基地内ということもあり、我々が普段馴染みのない世界だったことも興味を惹かれたポイントでした。また、実話を元にした企画だったので、合唱団に携わっていた実際の方々に取材をして、当時の心境やエピソードについて色々と話を伺えたことも良かったです。



『シング・ア・ソング!〜笑顔を咲かす歌声〜』© MILITARY WIVES CHOIR FILM LTD 2019


Q:紆余曲折を経てみんなが一つになっていく、笑って泣ける物語でありながら、その横には軍人の妻達というシリアスな問題も存在する。この二つの共存は見事でした。

 

カッタネオ:ありがとうございます。その共存させる部分は今回の大きな挑戦でした。どんな形であっても、イギリス軍のプロモーション作品や、戦争を肯定するような作品にするつもりは一切ありませんでした。ただ、そのように見られてしまう危険性を伴っていたことは否定できません。とにかくこれは人間の物語なんだと、それを念頭に置いて慎重に作っていきました。


一方で、基地内での生活を描く際に、そこに伴う(夫や息子が戦地で死傷するという)悲劇や痛みを否定することはしませんでした。ただし、戦争や軍の存在について問題提起するような方向にはいかないように注意はしていました。物語が政治的な議論に傾いてしまうと、描きたかった感情の移ろいの部分が隠れてしまう。それは避けたかった。


取材時には、基地生活の良いところもたくさん聞くことができました。例えば、家のカギをかけずに生活できたり、子供たちがいつも走り回っているような古き良きイギリスの風景を感じて暮らすこともできる。また、各地への転任が多いため、基地内の人とそこまで仲良くはなれないと言う方もいました。それぞれ経験していることに違いはありますが、彼女たちが共通して言っていたのは「この生活はユーモアがなければ乗り越えられない」ということ。厳しい状況に置かれたとき、人間にはやはり笑いが必要なんですね。この部分は特にフォーカスして映画に反映していきました。




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