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『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』ブレント・ウィルソン監督 多くの苦しみと悲しみを抱え、それでもなお生き続ける天才アーティストの姿を見て欲しい【Director’s Interview Vol.231】

Ⓒ2021TEXAS PET SOUNDS PRODUCTIONS, LLC

『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』ブレント・ウィルソン監督 多くの苦しみと悲しみを抱え、それでもなお生き続ける天才アーティストの姿を見て欲しい【Director’s Interview Vol.231】

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アメリカのポップミュージックの歴史において、ブライアン・ウィルソンほど尊敬されているアーティストはいないだろう。1961年に弟たちや従兄、友人とともにロックバンド、ザ・ビーチ・ボーイズを結成し、英国からやってきたビートルズに対抗できる唯一のアメリカン・バンドへと成長させる。精神状態の悪化によりバンドを離脱し、最愛の弟たちの死の悲しみや、心の病と向き合いながらソロアーティストとして優れた作品を発表。80歳となった今も現役で活動を続けている。


そんなブライアンの過去と現在を見つめたのが、ドキュメンタリー映画『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』。ブライアンは大のインタビュー嫌いとして知られており、今の彼の言葉をとらえるとしたら、作り手は相当の苦労を強いられるだろう。この難業に挑んだのがブレント・ウィルソン監督。同じウィルソン姓ではあるが、ブライアンとは血縁ではない。彼はどのようにして、この珠玉のドキュメンタリーを撮りあげたのか? ブレント監督に話を訊いた。


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インタビュー嫌いから、どのように話を引き出したか?



Q:ここ数年、音楽ドキュメンタリーには優れた作品が多いと感じていますが、『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』も独特の切り口で、大いに心を揺さぶられました。


ウィルソン:ありがとう。私も素晴らしい音楽ドキュメンタリーが増えてきたと感じている。音楽ファンにとっては良い時代だね。


Q:そもそもの発端、ブライアンのドキュメンタリーを撮ろうと思った動機について教えてください。


ウィルソン:まず、彼のファンとして撮りたいと思った。大変な思いをするだろうことは予想できたが、こんなに大変なことになるとは正直、思っていなかった。この映画は、ある意味、苦肉の策から生まれた。最初は、こういうやり方で撮るつもりはまったくなかったが、ブライアン・ウィルソンと仕事をするうえでそれは必然的な方法となっていったんだ。


Q:その“苦肉の策”とは、ローリングストーン誌の記者でブライアンの親友でもあるジェイソン・ファインさんを聞き役に据えたことですよね?


ウィルソン:そのとおり。最初に撮影した、私によるブライアンへのインタビュー映像が、この映画の冒頭にある。このときのインタビューは思い返してもヒドいもので、私はブライアンがどれほどインタビュー嫌いなのかを知ることになったんだ。そこで、インタビューすることなく、生身のブライアン・ウィルソンをどうやってとらえるか?という方向に発想を転換した。ブライアンがジェイソンと一緒に、LA中をドライブしながら語り合うというやり方はそこから生まれたんだ。



『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』Ⓒ2021TEXAS PET SOUNDS PRODUCTIONS, LLC


Q:その車中にカメラは設置されていましたが、ブライアンとジェイソン以外、映画のスタッフは乗っていなかったのですか?


ウィルソン:彼らふたりだけだよ。カメラマンは車中にはおらず、カメラをフィックスして設置した。音声はケーブルを引いて録音した。行き先はブライアンに決めてもらい、それに従って動いたんだ。そういう意味では、この映画はブライアンとジェイソンのバディムービーのようになっていったと思う。ブライアンは、とてもリラックスして多くのことを語ってくれた。彼とジェイソンの会話は、まさに友人同士のそれだ。この手法を始めたその日から、私は本作が特別なものになると確信したよ。


Q:監督がブライアンと最初に対面したときの印象はいかがでしたか?


ウィルソン:最初は私もナーバスになった。“なんてこった!目の前にブライアン・ウィルソンがいる!……という感じだったね(苦笑)。初めてビーチ・ボーイズを聴いた9歳のときに、一気に引き戻されたような感覚だ。どんなにクールに装っても、心は大気圏外をさまよっていた(笑)。しかし、このほろ苦い初対面も、今となっては報われたと思っている。ブライアンとジェイソンという、新しい友人ができたのだからね。映画を製作していたときはキツいと感じていたけれど、今ではその思い出が楽しいものに変わったよ。





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