決め手は性格と気配、向き合い方
Q:今話題に出たカメラマンですが、野田直樹さん、上野千蔵さん、重森豊太郎さん、光岡兵庫さんなど個性豊かな多くの方と組まれています。作品によってカメラマンはどのように決めているのでしょうか。
関根:野田直樹さんと出会ったときは、ちょうど彼が『バベル』(06)の撮影助手を終えた時で、「それはすごいね。一緒にやろうよ」と始まりました。千蔵くんはその弟子だったので、野田さんのシステムを受け継いでいて野田さんと同じく英語も話せた。それで自然と一緒にやるようになりました。重森さんはフィルムの時代から撮り続けている方で、「いつかフィルムで撮りたいですよね」と一緒にやりはじめて、『生きてるだけで、愛。』(18)でついにフィルム(スーパー16)で撮影しました。そうやってご一緒してきた皆さんも忙しくなってきたりで、次世代の若いカメラマンたちともやるようになり兵庫君と出会ったんです。
スタッフィングの際には、彼らの撮り方や作品を見て決めますが、その人の持っている性格や気配、そして作品への向き合い方みたいなことが大きいかもしれません。あとはその時の巡り合わせかな。カメラマンの向き合い方と、作ろうとしている作品がフィットするかどうかはすごく考えますね。
関根光才(映像作家・映画監督)
Q:ビジュアルを構成するにあたりコンテなどは描かれるのでしょうか? また現場では、カメラマンとどのようなことを話されるのでしょうか。
関根:コンテは描きたくないですね。映画はもちろん、CMやMVも最近はできるだけ不必要には描かなくなってきました。描く意味がわかんなくなってきちゃったんです。最近は、CMのようにある種の“契約”が必要な時にだけ描くようにしています。あとは合成などVFXがあってスタッフ間で共通認識が必要な時くらいですね。それ以外は描く意味がないのかなと。映画の面白さって、脚本をそれぞれが解釈して現場に持ち寄ることだと思うんです。監督がビジュアルとカット割りを全部考えてしまうと、みんなの解釈を制限して排除することに繋がってしまう。コンテを描くと結局そういう作業になってしまいがちなので、あまり意味を感じなくなってきたんです。
Q:では現場でカメラマンと話しながら、その場で画を作っていくのでしょうか。
関根:そうですね。映画の場合はできるだけ事前に打合せを多く重ねます。脚本ができた段階、ロケハンの段階、そして撮影現場と、都度修正しながら一緒に画を作っていきます。でも結局は現場が一番大事なんですけどね。最近は画に対してできるだけスタッフに強制はしたくないと思っています。
Q:そうやって各カメラマンにビジュアルを委ねつつも、関根監督の作品たちは同じ世界観を感じるので不思議です。
関根:多分どうしてもクセが出てくるんだと思います。今回の特集上映で短編を3本上演しますが、それぞれ全然違う作品にも関わらず何か共通したクセを感じてもらえる。でもそれは何かと言われても自分ではちょっとよくわからなくて、逆に聞きたいくらいです(笑)。あとはビジュアルよりもストーリーに引っ張られることのほうが多い。ストーリーやキャラクターに感情移入しているから、そこにすごく影響されていると思いますし、観てくれた人がどこか主観的に共通項を見いだしているのかもしれません。