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『関根光才監督特集上映』映画・映像は人と深い対話をするコミュニケーションツール【Director’s Interview Vol.245】

『関根光才監督特集上映』映画・映像は人と深い対話をするコミュニケーションツール【Director’s Interview Vol.245】

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映像が持つ力



Q:最近では「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」の発起人を務め、その動画を制作するなど、社会活動のフィールドでもアクティブに行動されています。映像を使った直接的な社会活動を始められた理由を教えてください。


関根:昔アメリカで映画の勉強をしていた時に、映画ってすごく恐ろしいメディアだと学びました。映像を使った有名な心理実験があるのですが、男が何かを見ている映像があって、その前後に流す映像によってその表情の意味が違って見えてくる。たとえば、ゆりかごに入った赤ちゃんの映像が流れてから男の顔を見ると、幸せそうな顔に見える。一方で、倒れて死んでいる人の映像が流れてから男の顔を見ると、悲しそうな顔に見える。これはつまり人間にはフィクションやコンテクストを読み取る力があって、映像はそこにとてもフィットするものだということ。映像は感情や心理状態をも左右させる力があり、それが故にプロパガンダとして使われ戦争とともに発達してきた側面も持っている。映像というものは取り扱いに気をつけねばと思いつつも、だからこそ逆にきちんとした使い方ができればと思ったのも事実です。


その後映像の仕事を始めてからはそのことも忘れていたのですが、3.11が起こって世の中がひっくり返り、またそれを思い出した。それまでは、エンターテインメントでいかに面白い映像を作るかということに終始し、それが例えアート方向のものだったとしても同じような意識しかありませんでした。でも、震災が起こった後はそれだけではダメだと痛感させられたし、自分たちが扱っている映像というものはとても危険なのだと再認識させられた。また逆に、映像を使って自分たちにできることはなんだろうと考え始めるきっかけにもなった。それが「NOddIN(ノディン)」という活動につながっていきました。「NOddIN」は丹下紘希さんという映像監督の呼び掛けで仲間たちが集まり、自分たちの社会にちゃんと向き合っていこうと手弁当で始めたプロジェクトです。その後月日が経ち活動自体も変化していったのですが、僕はそういったきっかけもあって「VOICE PROJECT」を始めることになりました。


「VOICE PROJECT」


「VOICE PROJECT」は、自分の考えを喧伝するのではなく、それぞれが思っていることをシンプルにみんなで共有できないかと始めたものです。自分の意見を押し付けて対立するのではなく、お互いに聞く耳を持ち合うことができればいいなと。社会に対話をもたらすこと。まさに「投票」というものはそこに端的に結び付いていると思ったんです。


Q:これまでありそうでなかったものが「VOICE PROJECT」だと思いますし、これまでなかったこと自体が日本という国を象徴している気もします。そんな中で新しく始められたわけですから、良い意味で衝撃を受けました。


関根:あの動画に出て表立って発言してくれる人には本当に感謝と尊敬の念しかありません。あの方たちの勇気や誰かを思う心で成り立っているんです。不思議なのは、「投票に行ったほうがいいよ」って言っているだけで「誰に投票しろ」とは言っていないにもかかわらず、こんなにも言いづらいのはなぜなんだろうということ。それぐらいは普通に言い合えるほうが健全だと思っています。




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