1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『関根光才監督特集上映』映画・映像は人と深い対話をするコミュニケーションツール【Director’s Interview Vol.245】
『関根光才監督特集上映』映画・映像は人と深い対話をするコミュニケーションツール【Director’s Interview Vol.245】

『関根光才監督特集上映』映画・映像は人と深い対話をするコミュニケーションツール【Director’s Interview Vol.245】

PAGES


人と深い対話をするコミュニケーションツール



Q:今後はどういった映像/映画を撮っていきたいですか?


関根:今はいろんな映画の企画を進めていて、すごく楽しいです。できればこのまま一生やり続けたいですね。社会に向き合うものもやりたいし、環境問題についても何かできないか考えています。一方で全然違うジャンルですが、ミステリーもやってみたかったりする。実は今回の『ZENON』はまさにミステリーがやりたくて作った短編です。


でも映画監督になること自体は目的ではないんです。映画・映像は、人と深い対話ができるコミュニケーションツール。そこがとても面白い表現手法だと思っています。


Q:では最後に、影響を受けた監督や映画作品を教えてください。


関根:自分の人生でベスト3を挙げるなら、1位は『』(54)ですね。人間の悲しさを感じつつも、その中にある根源的な強さもあり、人間自体を問うすごく大きな質量の映画になっている。自分の人生の中ではこの映画が巨大な位置を占めていて、そのこと自体に対する驚きもあります。


アンダーグラウンド』(95)もすごく好きで、ぶっ飛んだ自由な視点で政治の話が描かれる。特にびっくりしたのは、人間と故郷との結び付きをすごい手法で表現するところ。人間って帰る場所がこんなにも必要なのかということを、今まで見たことも聞いたことない表現で見せつけられました。原発事故のような災害を経た後で見直すと、帰ること、について深く考えさせられます。


最後は、ヴィム・ヴェンダースの『パリ、テキサス』(84)です。僕はこの映画を見てすごくアメリカに行きたくなり、実際に行ってしまいました。映画に出てくるテキサス州のパリに行きたくて、グレイハウンドという安い長距離バスを乗り継いで行ったのですが、当時は1990年代の半ばで、そこはアジア人なんて全然いない地域だった。そんなところに日本人の僕が行ったものだから、モーテルの人たちもみな驚いてるんです。僕が来た理由をちゃんと説明したのですが、そもそもみんな『 パリ、テキサス』を全く知らない。自分たちの街の名前を冠した映画がカンヌ映画祭でパルム・ドールを獲っているのに、カンヌ映画祭すら知らない。あまりに収穫がなくてほんとに衝撃を受けました(笑)。そんな思い出も含めて、自分が取り憑かれてしまった映画でしたね。でもこの作品で初めて映画監督ってすごく面白そうだなって思いました。同時にこんなすごい映画は自分には作れないだろうなとも思いましたけど(笑)。






関根光才

映像作家・映画監督。クロスカルチュラルなストリーテリングと思索的なビジュアルスタイルで、長編映画や短編映画、CM、ミュージックビデオ、アートインスタレーション作品など多岐に渡るジャンルの映像作品を監督・制作している。造形アーティストの両親のもと、東京で生まれる。上智大学哲学科在籍時、アメリカでの短い留学中に写真に興味を持ち、映像制作を志す。卒業後、2000年から広告映像制作会社にプロダクションアシスタントとして勤務。2005年に初監督の短編映画『RIGHT PLACE』を発表し、ニューヨーク短編映画祭の最優秀外国映画賞などを受賞。翌年、英レインダンス映画祭のために監督したトレイラー作品と共に、カンヌ広告祭のヤング・ディレクターズ・アワードにてグランプリを含め3部門で最高賞を受賞し、英誌SHOTSの発表する新人監督ランキング世界1位となる。2008年に独立後、国内外で多くの短編映画、CM、ミュージックビデオを監督し国際的な認知度を高めると、世界数都市に拠点を持つ映像制作会社Stinkに参加。2014年に手掛けたHONDA『Ayrton Senna 1989』はカンヌ広告祭チタニウム部門グランプリなど、同年度世界で最も多くの賞を受賞した広告映像作品となった。2018年、初めて長編劇場映画の監督・脚本を担った『生きてるだけで、愛。』(原作:本谷有希子)が公開。過眠症の女性が経験する葛藤を描いた本作では、新人映画監督に贈られる新藤兼人賞・銀賞、フランス、キノタヨ映画祭・審査員賞などを受賞。同年、大阪万博から始まり現代社会の構造問題を問う長編ドキュメンタリー映画『太陽の塔』も公開された。現在は長編映画を含めた様々な映像の演出を手がけながら、社会的アート制作集団「NOddIN(ノディン)」でも創作を続けており、原発問題や反戦、難民問題などをテーマにした作品を公開している。映像制作会社NION(ナイオン)共同設立者。



取材・文:香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。


撮影:青木一成



関根光才監督特集上映

上映期間:9月9日(金)〜10月6日(木)

会場:シモキタ-エキマエ-シネマ『K2』

住所:東京都世田谷区北沢2-21-22 (tefu)lounge 2F

上映作品:

『ZENON』(2021年/30分)

『彼女が夢から覚めるまで』(2021年/30分)

『Nighthawks in Bangkok』(2012年/22分)

『仕立て屋のサーカス Cut the Fish』(2020年/66分)

『森山未來 Re:Incarnation』(2020年/127分)

太陽の塔』(2018年/112分)

生きてるだけで、愛。』(2018年/109分)

BUNGO ~ささやかな欲望~『鮨』』(2012年/37分)

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. Director‘s Interview
  3. 『関根光才監督特集上映』映画・映像は人と深い対話をするコミュニケーションツール【Director’s Interview Vol.245】