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『関根光才監督特集上映』映画・映像は人と深い対話をするコミュニケーションツール【Director’s Interview Vol.245】

『関根光才監督特集上映』映画・映像は人と深い対話をするコミュニケーションツール【Director’s Interview Vol.245】

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ビジュアルの秘密



Q:関根監督が手がける映像はその圧倒的なビジュアルセンスを抜きにしては語れません。美術大学やその系統の学校出身ではない関根監督ですが、そこの部分はどうやって培われたのでしょうか。


関根:ビジュアルに関してはほとんどクセみたいな感じでやっているので、自分ではあんまり分かんないんです。両親は二人ともアーティストで姉も美術系、自分以外の家族がアート系だったので、そういうものに見たり触れたりする機会は多かったと思います。ただ、特にアートとしてのトレーニングは何も受けてないんです。血筋としては、美しいものを作ることやビジュアル全般に対して根本的に興味があるので、単純にそこから逃げられなかっただけかなと。


小さい頃はむしろアートというものに対して嫌悪感すらありました。親父は帰ってこないし、その友達もアバンギャルドでぶっ飛んだ人たちばかりだし、この人たちの家族はどうなってるんだろうって心配するくらいでした(笑)。そんなこともあり自分はアートの道には進まず、むしろ普通のサラリーマンになりたいと思っていたんです。そうやっていろいろと思い悩んでいたので哲学科に行っちゃったんですけど(笑)。


Q:関根監督が手がけたCMでは「TOYOTA H.H.(Hybrid Harrier)」が個人的に大好きです。言語を超えている感じがして、日本人がディレクションした感じが全くなかった。何をどうすればこういう画を構築できるのか不思議でした。


関根:ありがとうございます。あのCMはクリエーティブブエージェンシーのTUGBOATの方々と作らせて頂いたのですが、映画的な世界観を意識して欲しいということで、自分でも好きなようにできた仕事でした。


日本人がディレクションしたように見えない点については、海外の映画を観る方が多かったし、自分の実家がホームステイ先のようになっていて外国人の方が滞在していることが多かったので、どうしても海外からの視点に自分の気持ちが引っ張られてしまう。それが要因かなと思います。好きな日本映画には一昔前のものが多く、現代の日本映画にはあんまり心が動かないものが多かった。なぜか自分の感覚にフィットしないんです。いろいろ検証していくと撮り方も原因のひとつかもしれないと思い至りました。そんなときに衝撃を受けたのが『ロスト・イン・トランスレーション』(03)でした。同じ日本で撮っているのに自分が見てきた日本映画と全く違う。それまでは日本の場所自体にも原因があると思っていました。どこに行っても蛍光灯がついて明るくて、どこかプラスチッキーな感じがするような、そんな日本の風景が自分の感覚にフィットしないのだと思っていたのですが、『 ロスト・イン・トランスレーション』を観たときにそれが覆された。結局日本の撮り方が海外と違っていて、そこに大きな原因があるんだと分かったんです。


そこから海外と日本の撮影の違いを研究するようになって、DOP(Director of photography)のシステムやライティングの違いなどに注視しました。ただ、僕はカメラマンではなかったので、同じ志向の若いカメラマンたちと一緒に組んで始めたんです。彼らは海外で勉強していたり、海外のDOPについて仕事をしていた経験があった。そういう人たちと一緒に仕事をするようになったことはかなり大きかったですね。


当時は、海外ではできて日本ではできないと思われることが癪だった。自分たちもそこをできるようになろうと。そこから日本のオリジナリティを作れるようになるのではないか。まさにハリアーのCMなどはその辺を意識してやっていました。あえて日本人ディレクターだとは感じさせないようにしたんです。まず基礎づくりをしているような感覚でした。




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