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『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』セドリック・ル・ギャロ&マキシム・ゴヴァール監督 LGBTQ+を描いた映画に当事者性は必要か【Director’s Interview Vol.251】

『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』セドリック・ル・ギャロ&マキシム・ゴヴァール監督 LGBTQ+を描いた映画に当事者性は必要か【Director’s Interview Vol.251】

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シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』(19)は、フランスに実在するゲイの水球チーム「シャイニー・シュリンプス」の活躍を描いた“王道のスポ根映画”だ。熱いストーリーや個性たっぷりのキャラクターが人気を博したほか、ポジティブ&ライトな作風ながらLGBTQ+のシビアな現実をにじませるシリアスさで高い評価を獲得。監督・脚本は、実際にチームの一員だったセドリック・ル・ギャロと、コメディの世界から頭角を顕したマキシム・ゴヴァールが務めた。


続編『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』で、セドリック&マキシムは大胆な挑戦に臨んだ。前作の楽しさはそのままに、映画のジャンルをがらりと変えてみせたのだ。今回、シャイニー・シュリンプスはLGBTQ+によるスポーツと文化の祭典「ゲイゲームズ」の開催地・東京を目指す道中、性的マイノリティへの差別が蔓延する異国に足を踏み入れてしまう。極限からの脱出をめぐるサスペンス、よりシリアスになった人間ドラマ、そして変わらないユーモアの融合は、前作のファンには新鮮で、同時に新たな観客の心もしっかりとつかむはずだ。


セドリック&マキシムは、大ヒット作の続編でなぜダイナミックな方向転換に挑んだのか。ふたりで映画を創作する方法論とは。そして、LGBTQ+映画の現在をどう捉えているのか? インタビューの途中には、ふたりの間で白熱した議論が交わされる瞬間も。間口の広さとテーマの深さを両立する、フランスの気鋭コンビにじっくりと話を聞いた。


Index


「2作目」ではなく「続編」



Q:前作『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』に続き、本作でも多様なセクシャリティやアイデンティティの問題、ヘイトクライムなどが描かれています。続編のテーマやストーリーは前作の時点で構想していたのでしょうか?


セドリック:最初は続編が作れるとは思っていませんでした。前作の目標は、「この映画を成功させる」ということだけ。LGBTQ+を描いた映画はそう多くないし、水球もフランスでは本当に珍しいスポーツで、それを描いた映画は歴史上3~4本くらいしか作られていないと思います。だから1作目を成功させることはとんでもないチャレンジだったし、それが叶ったから続編を作れたんです。けれども、最初は続編の話を断るつもりでした。それは前回と同じことをしたくなかったからなのですが、別のアプローチで描けるテーマがたくさんあるとわかったので引き受けました。



『シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ』©2022 LES IMPRODUCTIBLES - KALY PRODUCTIONS - FLAG - MIRAI PICTURES - LE GALLO FILMS


Q:どちらかと言えば前作は「熱血スポーツ映画」に近い作品でしたが、今回はシリアスなテーマをストレートに扱った人間ドラマで、政治的な側面が強まったとも言えます。これは大胆な方向転換ですよね。


マキシム:(前作で描いたことのほかにも)僕たちには描きたいことがあったし、また描く責任もあると考えていました。前作が成功し、自分たちの声が遠くまで届いたことで、僕らが挑戦すべきテーマを語れるようになったからです。われわれは今、必然的に政治的にならざるをえない時代を生きていると思います。今回は前作と同じように楽しい映画を作ろうと思いましたが、「2作目」ではなく、前作のその後を描く「続編」にしたいと思いました。まるで2本の映画で1つの作品であるかのように。


Q:まさにおっしゃる通り、本作はシリアスでありつつも常に明るく、またユーモラスです。シャイニー・シュリンプスのメンバー同士の掛け合いも魅力的ですが、それらはすべて脚本通りなのでしょうか? 俳優のアドリブで生まれる部分も大きいのでしょうか。


マキシム:アドリブはほとんどありません。この映画はアドベンチャー・コメディですから、リズムがとても重要で、アドリブや即興を取り入れるのはリスクが高いんです。即興の演技が面白かったとしても、それに頼るとシーンのリズムが狂ってしまう。大勢のキャラクターによって様々なストーリーを語る作品なので、そこで映画のバランスを崩すわけにはいきませんでした。脚本は時間をかけて執筆し、出来栄えにも満足していたので、なるべくその通りにやりたかったんです。前作の方が即興は多かったかもしれませんね。


セドリック:撮影現場では、もちろん「この台詞はこうした方がいいね」といったアイデアが出てくることもあります。その時には即興を取り入れることもありますが、それは完全なアドリブではなく、あくまでも脚本をより良くすることが目的なんです。




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