作品をプラットフォームとセットで考える
Q:先ほどちらりとお話がありましたが、MEGUMIさんが現状進められている企画を可能な範囲で伺えますか?
MEGUMI:ひとつは日本の食にフォーカスしたドキュメンタリーです。世界的に見ても、日本料理やフランス料理のように炒める前に出汁をとるといったひと手間加える食事は、かなり珍しいんです。いまは色々とリサーチを進めている段階ですが、日本食は食材がえげつないほど良い。でもその食材を作る職人さんが村に一人くらいしかいらっしゃらない現状なので、そうした危機的な状況を国内にも伝えつつ、海外の人にも「日本食はやっぱりすごいんだ。日本に行きたいな」と思ってもらえるような映像を作ろうと準備を進めています。こちらは配信作品ですね。
もうひとつは長編映画で、いまもご存命の70代の女性をモデルにした作品です。若い頃に男尊女卑を非常に経験されて、それでも道を切り拓いていった姿を描いていきたいと思っています。こちらは海外の映画祭を目指しています。
Q:フードドキュメンタリーの劇場公開は当たると大きいぶんハードルも高いでしょうから、配信形式と伺ってしっくりきました。
MEGUMI:そうなんですよね。長さも10分くらいにして、8本くらいのエピソード形式にしたら移動中などにサッと観てもらえるんじゃないかと考えています。超上質なドキュメンタリーを目指しながら、視聴者に観やすいものを作りたいです。
Q:海外映画祭に出品することの重要性については、どのように捉えていらっしゃいますか?
MEGUMI:やはり日本の人たちは良くも悪くも「流行っているから観よう」という意識が強く、映画館に上映をお願いするときにも「映画祭に選ばれています」という実績があると成立しやすいんです。カッコいいミニシアターの中には自分たちの目利きで作品を選定するマニアックな方々もいらっしゃいますが、やっぱり映画は商業であり興行ですからある程度名前が知られていないと売れないという事実もあります。
あとはやはり、映画祭には夢があります。現地に行くと「最高! 楽しい!」と思えるし、みんながタキシードやドレスを着て大きなスクリーンで映画を観て……海外の映画祭だと、期間中はその街に映画人しかいないなんて状況になりますから。バンドマンが「いつか東京ドームでライブをやりたい」と思う感覚と同じで、理由なき憧れがあります。
MEGUMI
1981年生まれ、岡山県出身。俳優として第62回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞。近年は映像の企画、プロデュースを行なっている。プロデューサーとしての作品にドラマ「完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの」(22年/テレビ東京)、映画「零落」(23年/竹中直人監督)、ショートムービー「LAYES」(22年/内山拓也監督)などがある。2023年より、BABEL LABELにプロデューサーとして所属。
取材・文:SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」 「シネマカフェ」 「装苑」「FRIDAYデジタル」「CREA」「BRUTUS」等に寄稿。Twitter「syocinema」
撮影:青木一成