出演者に合わせて変えた脚本
Q:キャラクター設定とキャスティングが完璧にハマっていますが、各キャラクターはキャスティング含めてどのように作られたのでしょうか。
山下:10代の子たちはほぼオーディションで決まりました。とにかくあのときは色んな人に会わせてもらっていて、当時活動している女の子のバンドを調べては、プロデューサーと一緒に観に行っていましたね。湯川潮音ちゃん(今村萠 役)のライブに行ったりとかね。山崎優子(中島田花子 役)に関しては「池袋に変な女の子がいる」という噂を聞いたので、オーディションに来てもらったらすごく面白かった。これは絶対に出したいと思って、最初は留年した中島田花子がボーカルの予定だったんです。なんだけど…、何か違うなと思って、最終的にはペ・ドゥナになったのですが、でも山崎優子は面白いからどうしても出て欲しいなと。それで、留年した一個上の先輩というキャラで出てもらいました。そうやって会っていく中で、面白いなと思った人をピックアップしては、脚本にある役にはめていくんじゃなくて、「この人面白いからキャラクターもそっちの方向に変えちゃおう」という感じで、脚本も同時進行で変わっていきました。
ペ・ドゥナに関しては、『ほえる犬は噛まない』(00)が日本で公開されて、『子猫をお願い』(01)で来日した頃にオファーしたので、まだ一部の映画ファンだけが知っているような存在でした。留学生という役も、ペ・ドゥナと仕事をしたいと思ったから作ったキャラクターです。今村萠も湯川潮音ちゃん合わせで作った役で、歌う曲も彼女と一緒に決めていきました。そうじゃなきゃ多分「風来坊」とか歌ってないですよね。あれを歌いたいっていうのは湯川さんの希望でしたから。
『リンダ リンダ リンダ 4K』©「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ
Q:白河望 役の関根史織さん(Base Ball Bear)もいい味を出していましたが、当時は演技初体験だったのでしょうか。
山下:初でしたね。彼女と会ったのはまだBase Ball Bearがデビューする前で、下北沢のライブを観に行ったときでした。最初に会ったときはもしかしたら高校生だったかもしれません。撮影のときは19歳だったんですけど、たぶん高校生のときからBase Ball Bearをやっていて、デビューが決まりかけていた頃だと思います。
Q:立花恵 役の香椎由宇さんは、『ローレライ』(05)等でブレイクし始めた頃だったような記憶があります。
山下:そうですね。ちょうど『ローレライ』が出た後ぐらいですね。撮影時、唯一女子高生だったのが香椎さんだけで、まだ高校3年生でした。彼女は本当に顔が出来上がっているので、撮影初日に「この子、隙がないね」と、カメラマンと悩んだことを覚えています。どこから撮っても顔が完璧なんですよ(笑)。『ローレライ』を観て香椎さんに会わせてもらったのですが、ちょっと影のあるような雰囲気がすごく魅力的だった。正直に発言するし、変にカッコつけてないところも素敵でしたね。4人の中で最初に決まったのが香椎さんでした。
前田亜季さん(山田響子 役)は一番芸歴が長かったのですが、最後に決まったのが彼女でした。ドラム担当が決まらなくて「どうしよう、どうしよう」って焦っていたときに、オーディションリストの中に前田さんの名前を見つけて「前田さん、オーディションとか来てくれんの⁉︎」と(笑)。プロフィールを読むと特技の欄にドラムって書いてあって、もう「おぉー!」って感じでした。子役から仕事をしていて芸歴も長いので、もうベテランだなと思っていたのですが、実際に会ってみたら普通の19歳の女の子で、なんかすごくいいなと。それで全員決まり、そこから撮影に入っていきました。