ゼロ年代を代表する名作『リンダ リンダ リンダ』が4K版としてスクリーンに帰ってきた。公開当時とんでもなく面白い印象があった本作だが、20年経った今再見すると、その奇跡的なまでの仕上がりには驚くばかり。この映画、こんなに凄かったっけ…?
撮影時の山下敦弘監督は弱冠28歳。まだまだ新人だった山下監督は、いかにして『リンダ リンダ リンダ』を作り上げたのか。話を伺った。
『リンダ リンダ リンダ』あらすじ
⽂化祭前⽇に突如バンドを組んだ⼥⼦⾼⽣たち。コピーするのはブルーハーツ。ボーカルは韓国からの留学⽣!本番まであと3⽇。4⼈の寄り道だらけの猛練習が始まった!
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ダメ男から女子高生へ
Q:20年経っての再上映ですが、改めてご覧になっていかがでしたか。
山下:10年前の10周年のときも上映してもらっていて、観るたびに客観的に観られるようになりました。今ではもう、女の子たちが一生懸命やってるだけで泣けてくるという…。完全に年を取ったなという感じですね(笑)。自分で監督したんですけど、何かもう別物な感じがします。
Q:公開当時、ものすごく面白かった印象がありましたが、改めて観ると新人監督とは思えない完璧な仕上がりで驚きました。当時は作品に対してどんな印象がありましたか。
山下:当時は監督したのがこれで5本目くらい。それまでは「ダメ男三部作」と言われる、いわゆる四畳半から半径10mくらいの世界観でやっていたので、最初これを作ったときはわからなかったですね。これで良かったのかなと。それまで自分が作ってきたものとは逆ベクトルのものを作った感もあり、自分の感覚が追いついていない感じがすごくあった。もちろん、みんなで頑張って作ったという手応えはあったのですが、いざ完成して、公開されて、色んな人が褒めてくれる中で、自分はまだこの映画の魅力みたいなものにあんまりピンときてない感じでした。
『リンダ リンダ リンダ 4K』©「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ
Q:ダメ男を描いていた監督が、急に女子高生描くことになったわけですよね。
山下:だから「なんで俺に⁉︎」って思いましたよ。それまで撮ってきた映画に、音楽的な要素があるわけでもないし、10代のキラキラな感じがあるわけでもない。ただ、プロデューサーが言ってくれたのは、「何となくのストーリーラインはあるんだけど、それも一度白紙にしていいから、“女子高生がブルーハーツをコピーバンドする”っていうとこだけで、一緒に考えませんか」ということでした。「だったらお願いします」と一緒に開発していった感じでしたね。
Q:当時は“おしゃれな映画”という評価もありました。自分が手がけたものがそういう方向にいくことはいかがでしたか。
山下:たぶん当時の自分は、絶対おしゃれなんかにしたくないと思っていたし、そういったものは全く目指してなかった。でも結果、10代の女の子たちをちゃんと切り取れば、何かしらの清々しさや透明感、キラキラしたものになるんだというのは、作った後に気づきましたね。それまではダメな20代の男たちを描いていたのですが、撮る対象が10代になってくると、その子たちから自然と出てくるキラキラで映画自体の見え方が変わるんだなと。この映画ですごく勉強になりました。