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『リンダ リンダ リンダ 4K』⼭下敦弘監督 何かに特化しない映画の強み【Director’s Interview Vol.510】

『リンダ リンダ リンダ 4K』⼭下敦弘監督 何かに特化しない映画の強み【Director’s Interview Vol.510】

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真俯瞰が好きだった



Q:すべてのショットが一枚絵として切り取れるくらいに完璧で、フィックスとカメラワークの使い分けも絶妙です。アングルや動きはどのように決めていったのでしょうか。


山下:僕は絵コンテとか描かずに、現場でなんとなくお芝居の動きを決めて「じゃあ、カット割りしましょうか」というスタイルなのですが、最初にそれをやったのがこの映画でした。それまでは、監督って絵コンテを描かなきゃいけないんじゃないかとずっと思っていて、でもカットの割り方がわからないから絵コンテが苦手だった。でもこの映画では、僕が芝居を固めるまで池内さんがずっと待ってくれていて、芝居が固まったら、「じゃあこれは引きでいこうか」「ここは割ろうか」と池内さんが決めてくれた。「あ、現場で決めていいんだ」と。


主人公がいないような脚本だったので、変にカットを割るよりも、ずっとグループショットで撮った方がこの映画にとっては良いんじゃないかと。確か池内さんはそう言っていましたね。


Q:オープニングでの廊下の横移動や、土手に上がっていく移動など、象徴的なカメラワークも多いです。


山下:あれは事前に決めていました。特にオープニングの移動ショットは、手前を前田亜季ちゃんがずっと歩いていて、その奥に登場人物たちが映り込んでくる。意図的にやりましたね。土手を歩くところは...あれは誰が決めたんだろう(笑)。ただ、当日のことで覚えているのは、昼の撮影が早く終わったのでそのまま土手を歩くシーンを撮ろうとしたのですが、夕方まで待つことになったんです。薄暗くなってきたら向こう岸の灯りがポツポツ点きだすので、それを狙おうと。それで20〜30分くらい、皆でぼーっと待っていたのを覚えていますね。その後、軽トラにカメラを積んで、平行移動で撮りました。



『リンダ リンダ リンダ 4K』©「リンダ リンダ リンダ」パートナーズ


Q:クレーン撮影ではなかったのですね。


山下:この映画でクレーンを使ったのはプールの真俯瞰だけです。クレーンを動かすっていう発想がなかったので、真俯瞰ぐらいしか使い方を知らなかった(笑)。「真俯瞰が欲しいです」と言ったら、あの日だけクレーンを借りて来てもらえました。プールの真俯瞰って、何かの映画のパクリなんです。有名な映画で何かあったんですよね。それがやりたくて。僕ら世代は松岡錠司監督の『バタアシ金魚』(90)とか、相米慎二監督の『台風クラブ』(85)などがプール映画としては好きなのですが、真俯瞰はその映画じゃなかった気もしますが…。なんか真俯瞰が好きでしたね。『家族ゲーム』(83)とかも好きで、あの映画にも意味ない真俯瞰が結構あるんですよ。


Q:フィルム撮影ということで当時は現場モニター(ビジコン)などはなかったのでしょうか。また、地方ロケなので現像したラッシュもすぐには確認できないですよね。


山下:当時のビジコンはほとんどモノクロで、フレームのサイズを確認する程度。だからほとんど見てませんでした。それでも最初に撮った分だけはラッシュを確認しようと、ロケ場所近くのホールを借りて上映したのですが、初の35mmで何だか恥ずかしくて、「これ、再撮影してもいいですか」と池内さんにお願いした記憶があります。自分の演出が35mmに追いついてない気がしたんですよね。周りは「綺麗に撮れているし、全然大丈夫だよ」と言ってくれたのですが、再撮影したものの、結局は元のやつを使ったんじゃないかな。その一件があってから、「ラッシュに監督を呼ぶのはやめよう」となりました(笑)。





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