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『太陽を盗んだ男』を放った、ゴジと呼ばれた男【そのとき映画は誕生した Vol.4 後編その1】
監督と俳優が通じ合う時
撮影は、いよいよクライマックスを迎えようとしていた。6月3日は、「借り切り同然で、パニックを撮らせてもらった」(『平凡パンチ』前掲)と長谷川を喜ばせた、渋谷の東急デパートを舞台にした大捕物(実際の撮影は、東急百貨店日本橋店)の大がかりなロケが敢行された。
28日の夜には、『ザ・ベストテン』(TBS系)の中継が、日活撮影所の11ステージに入った。原発のプルトニウム貯蔵庫の巨大セットに立つ沢田が、5位にランクインした『OH!ギャル』を歌う。タバコを片手に、白いスーツで船長スタイルのジュリーの後方には、長谷川とメインスタッフが手拍子する姿がオンエアに乗った。間奏中には、セットの全容を中継のカメラが見せるなど、メイキングフィルムが存在しない本作にとっては、貴重な撮影風景となった。
7月4日からは、4日間にわたって、東京・九段にある科学技術館の屋上を使ったクライマックス・シーンの撮影である。沢田が演じる城戸誠と、菅原文太が演じる山下警部が、死んでも死なない空前の格闘シーンを演じることになる。
この撮影ではクレーン車を2台持ち込み、1台には沢田と文太を逆さ吊りにして、もう1台のクレーンにはカメラを設置することで、落下中の2人の表情を狙うなど試行錯誤を繰り返した。
主演2人の負担も大きかったが、彼らは愚痴ひとつこぼすこともなく、要求に応えていった。
ここでも長谷川のねばりが発揮され、前日に撮ったものを全部棄ててリテイクを行うほどだったが、長谷川を喜ばせたのは、文太から提案された台詞の変更だった。それは、城戸こと9番(世界の原爆保有国は当時8カ国あり、自分は9番目という意味)を道連れに、山下が死のうとする場面でのことだ。
長谷川が前掲の『平凡パンチ』でこう語っている。
「山下が『さァ行くぞ、9番』って、言いますね。あのセリフ、現場で思いついたんだけど、最初は、さァ死ぬぞ、だった。それを文太さんの意見で『さァ行くぞ』にかえたんだけど、そういうことがツーカーで通じあうようになるまでは、大変ですね」
果てしなき死闘の末、死とエクスタシーが同化したような瞬間に山下が口にする最も相応しい言葉を、文太が見つけ出したのだ。
文太も、このクライマックスに、「手前ミソになるけど、あのシーンは、オレはやっぱりヘタでよかったなァと思うね。ギクシャクしてるけど、なんか奇妙な迫力があって、なまなましかったぞ、と」(『平凡パンチ』前掲)と口にし、手応えを感じていることをうかがわせた。