イスラエルとパレスチナ
Q:1976年のエンテベ空港の事件については、もともと何か知っていましたか?
パジーリャ:当時、僕は9歳で、リアルタイムでは事件のことは何も覚えていない。でもこの脚本を読む前から、この事件の話を聞いたり読んだりはしていた。なぜなら、僕の母方の血筋はユダヤ系だったから。
Q:ユダヤ系という出自があなたをパレスチナ問題に向かわせた?
パジーリャ:自分では、ユダヤ系であることにアイデンティティがあるとは思ってないし、ユダヤ教を信仰しているわけでもない。自分のことは不可知論者だと思っている。もし僕が何かの宗教を信仰するとすれば、それは仏教だろうね。今はロサンゼルスに暮らしていて、近くの仏教寺院で瞑想したりしてるから(笑)。でも僕には特に信じている宗教はない。ただ、家族にはユダヤ教の信者もいるし、僕もずっとイスラエルにまつわる物語に興味を持ってきた。確かにこの素材に惹かれた理由のひとつだと言えると思う。
Q:『ロボコップ』でもグローバリズムや大国アメリカの暴走を皮肉っていたように、監督の作品には常に当事者意識があると思うんですが、今回描いているのは70年代のパレスチナ問題です。この物語と現代との繋がりを感じましたか?
パジーリャ:イスラエルとパレスチナの問題については、事態を改善しようとする繋がりが失われつつあると思う。和平への道が閉ざされ、混乱した状態に終わりが見えなくなっている。
現イスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフが今の地位に付き、アメリカではトランプが大統領になり、少なくともかつては為されていた、イスラエルとパレスチナの話し合いは中断されてしまった。パレスチナ側もイスラエル側も積極的に交渉のテーブルにつこうとしていないし、アメリカ政府も和平交渉に否定的だ。
エンテベの事件から43年が経ったけれど、問題は解消されるどころか、以前より悪化したように見える。そしておそらく、世界の人たちもパレスチナ問題に飽きてしまっている。僕は、問題はそこにあると思っている。この問題を解決するために、人々が対話を始めてほしいと思うし、この映画が少しでも貢献してくれればと願っているよ。