1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. フィールド・オブ・ドリームス
  4. 『フィールド・オブ・ドリームス』人生の挫折と痛みを癒す、野球への愛
『フィールド・オブ・ドリームス』人生の挫折と痛みを癒す、野球への愛

(c)Photofest / Getty Images

『フィールド・オブ・ドリームス』人生の挫折と痛みを癒す、野球への愛

PAGES


『フィールド・オブ・ドリームス』あらすじ

マイナーリーグの選手だった父親から、おとぎ話のかわりに野球の話を聞かされて育ったレイ(ケビン・コスナー)は、ある日、自分の農場で不思議な声を聞く。“それを作れば彼はやってくる”。その意味を野球場をつくることだと解釈した彼は、育ててきたトウモロコシ畑の一部を潰し、野球場を作る。周囲からは変人扱いされお金も底をついたある日、野球場に一人の男が立っていた。それは、父のヒーローで今は亡き伝説の大リーガー“シューレス”・ジョー・ジャクソン(レイ・リオッタ)だった。36歳の妻子ある男が、夢を叶えるために冒険ができるのは今しかないと、“声”に導かれるまま、自分の夢に挫折した人々に会っていく。


Index


『ハーヴェイ』を引用した意味



「僕が道を歩いていたら、こういう声が聞こえたんだ、“こんばんはダウドさん”とね」


 ジェームズ・ステュアートがそう語る場面を観ていた娘に対して、ケヴィン・コスナー演じる父親のレイは「あの男は変人なんだ」とテレビを消してしまう。この時、劇中のテレビで放映されていたモノクロの映画は、ヘンリー・コスター監督の『ハーヴェイ』(50)だ。


 巨大な白うさぎ“ハーヴェイ”といつも一緒にいる、と主張するアル中の男が主人公のこの映画では、主人公のダウド氏以外の人間には“ハーヴェイ”が見えない。そして周囲の人間は、酒を飲み過ぎたせいで「ダウド氏は頭がおかしくなっている」と思っている。



『フィールド・オブ・ドリームス』(C) 1989 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.


 映画『フィールド・オブ・ドリームス』(89)の主人公レイ・キンセラは、トウモロコシ畑から聞こえてくる「それを作れば、彼はやってくる」という “声”に従って、農場の真ん中に野球場を作りはじめる。突然の行動に、周囲からは「気でも狂ったのか?」と思われているのだが、レイが地元の同業者たちに“声”について話しかける場面では、ご丁寧にビバリー・ダンジェロが歌う「クレイジー」という曲が店内で流れている。やがて、レイの作った野球場に、かつての名選手“シューレス”ジョー・ジャクソンのゴーストが現れることになる。


 信じる人にしか見えない。つまり『ハーヴェイ』の引用は、野球に興じる選手たちの姿や作品テーマへの伏線になっていることがわかる。レイの娘カリンは『ハーヴェイ』の物語を信じながら観ていたわけだが、野球選手のゴーストを発見するのが彼女であるという設定の所以は、そんなところにもある。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. フィールド・オブ・ドリームス
  4. 『フィールド・オブ・ドリームス』人生の挫折と痛みを癒す、野球への愛