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『ドールマイト』とブラックスプロイテーション



 でも勘違いしないで欲しい。元となっているルディ・レイ・ムーアが製作した『ドールマイト』(75)は、決して名作ではない。俳優たちも素人ならば、監督も映画俳優で演出は初めて、裏方も学生だったりする、素人集団による素人映画なのだ。しかし、ルディが語ったように「おっぱいとカンフーがある(見る人が見れば)楽しい映画」であった。素人ぽさが受けて、今ではカルト映画となっている。


 『ドールマイト』は、70年代に黒人を主役にした「ブラックスプロイテーション」と呼ばれる映画の1作である。ブラックスプロイテーション自体が低予算で作られたいわゆるB級作品なのだが、『ドールマイト』はさらに下の超低予算の自主製作映画である。




 70年代にブラックスプロイテーション映画が流行し、量産されたのには訳がある。アメリカに奴隷として連れて来られた黒人はずっと差別に喘いできた。映画が作られるようになっても、大手映画会社製作の作品で主役になることはなかった。50年代、キング牧師が登場し公民権運動と時を同じくしてシドニー・ポワチエも登場、やっと事態が改善してきたが、それでも差別は終わらなかった。そこに登場したのが、『スウィート・スウィートバック』(71)や『黒いジャガー』(71)という黒人のヒーローだったのだ。


 彼らは、真のヒーローというよりも、悪に片足を突っ込んだアンチヒーローで、悪だとレッテルを貼られた人たちもヒーローになれることを、ブラックスプロイテーションは教えてくれた。そして、お金も女性も車も手にしたヒーローは、若い人たちにとって最高にカッコよく見えたのだ。


 しかし、ルディ・レイ・ムーアには決定的な違いがあった。『黒いジャガー』のリチャード・ラウンドトゥリーや『スウィート・スウィートバック』のメルヴィン・ヴァン・ピーブルズのような2枚目なルックスは備わっていなかったのである。




 ルディ・レイ・ムーアは自分なりの面白いアンチヒーローを完成させたのだ。最高にバカなことでもやって、差別で喘ぐ同胞たちを楽しませてあげたい…… その一心だった。


 『ルディ・レイ・ムーア』の中で、「俺の映画のセットでは誰も”ボーイ”なんて呼ばせない(日本語字幕ではこのニュアンスはカットされている)」と、ルディ・レイ・ムーアは言っている。”ボーイ”は大人に満たない男という意味で、ジムクロウ法(人種差別的内容を含むアメリカ合衆国南部諸州の州法の総称)時代に良く使われた、黒人男性への差別語である。そんなクソ言葉を消すのも、ドールマイトの仕事なのだ。



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