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『悪魔のいけにえ』ニューヨーク近代美術館MoMAにも永久収蔵されたホラー映画の頂点

『悪魔のいけにえ』ニューヨーク近代美術館MoMAにも永久収蔵されたホラー映画の頂点

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フィクションとリアリズムのはざまで。



 さて本題。怖さの理由、である。最も大きな点は、フィクションなのにそうは見えない異様なリアリティだ。観客にとって、映画の中の出来事は人ごとではなくなり、当事者意識意を持って映画に対峙せざるを得ない。冒頭、「これは5人の若者の身に起きた悲劇の物語である」とBGM無しの文字スーパーで映画が始まるため、観客はドキュメンタリーを観るかのような状態に導かれる。


 また、本作では意外なことに、スプラッター映画のような直接的な描写や、誇張された流血シーンがほとんどない。刺激だけを煽るような意味のないカットを避け、虚構の世界だと切り捨てられないための様々な工夫で全編が貫かれている。故に、暴力的なシーンが突発的に挿入されると、非常にショックが大きいのだ。



異常な一家と監督の狂気



 リアリティを演出するにあたり、大きく貢献している要素は3つ挙げることができる。


 まず、本作の主人公とも言える、異常な一家の面々である。一人だけでも一本の映画が作れるぐらいのアクの強さがあり、キレッぷりも尋常ではない。こちらの想像を裏切る異常な行動しかとらないのだが、感心するのは、単なる怪物としては描かれておらず、あくまで血の通った人間、本当に恐ろしい人間として描かれていることだ。家族ケンカもするし、人を殺めたあとで、狼狽してしまったりする。




 そんな狂気の一家に出会ってしまった若い女性が、精神が崩壊して気を失ってしまうシーンも、さもありなん、という感じで、とても説得力がある。一体、この俳優たちは何者なのか?本当の狂人だったのだろうか?


 本作を分析するには欠かせないメイキング・ドキュメンタリー作品『ファミリー・ポートレイト』と『ショッキング・トゥルース』を観ると、いい意味で裏切られる。素の俳優陣は非常にまともで、むしろ紳士的ですらある。しかし、どうやら俳優たちは、撮影現場で監督に相当追い込まれていたようだ。


 暴力シーンでは本気で互いを叩かされる、灼熱の地面に顔を長時間押し付けて陽が出るのを待つ、一ヶ月同じ衣装を着て異様な臭いが漂う、などなど、監督の無理難題に応えて演じ切った俳優たちには脱帽する。



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