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『ドクトル・ジバゴ』名曲”ラーラのテーマ”が誘うロマンチシズムの極致を、今見るべき理由

(c)1965, Supplementary Material Compilation 2010 Turner Entertainment Co. (c) 2010 Turner Entertainment Co. and Warner Bros. Entertainment Inc.

『ドクトル・ジバゴ』名曲”ラーラのテーマ”が誘うロマンチシズムの極致を、今見るべき理由

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『ドクトル・ジバゴ』あらすじ

19世紀末のロシア。ユーリ・ジバゴは、医学の勉強を続けるかたわら詩人としても知られるようになった。幼い頃両親を失った彼は、育ての親の娘トーニャと結婚するが、パーティの会場で出会った薄幸の女性ラーラに心ひかれていく…。激動の時代に翻弄される男女を描いた、壮大な大河ロマン。


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ライバルは『サウンド・オブ・ミュージック』



 今から55年以上前、1965年のハリウッドでは、2本の大作映画が話題を独占する。まず、『サウンド・オブ・ミュージック』が3月に全米公開されると、当初の批評はイマイチだったもののチケットセールスは好調で、公開後4週目でボックスオフィスのトップに。12月になると、『007 サンダーボール作戦』が予想通りヒットする一方で、デビッド・リーンの『ドクトル・ジバゴ』は、批評も興行成績も芳しくなかった。


 静止画像をバックに流れる開映直後のオーバチャー(序曲)と、インターミッションを挟んだ3時間20分の長すぎる上映時間が、その理由として挙げられる。作品賞を始め7個のオスカーに輝いた、リーンの前作『アラビアのロレンス』(62)の上映時間が3時間40分だったことを忘れたかのように、批評家たちもその長さに対して不満を漏らしたものだ。しかし、同時に彼らは作品全体に漂うロマンチズムと大自然の雄大さを高く評価する。


 その後、『ドクトル・ジバゴ』に異変が起きる。『アラビアのロレンス』に続いてモーリス・ジャールが作曲したメインスコア”ラーラのテーマ”がヒットしたこともあり、観客が劇場に押し寄せ始めたのだ(ジャールは両作でアカデミー作曲賞を受賞)。


『ドクトル・ジバゴ』予告


 彼らは劇中で繰り返し流れる”ラーラのテーマ”に酔いしれながら、革命の嵐に翻弄される主人公、ユーリと恋人ラーラの報われない愛に涙し、同時に、厳寒のロシアと花が咲き誇る春のロシアの対照的な美しさに目を奪われる。結果、注目のアカデミー賞では『サウンド・オブ・ミュージック』が5部門、『ドクトル・ジバゴ』が5部門受賞という対等の評価を得る。


 注目すべきはボックスオフィスだ。結果的に、1965年度の年間興行成績で『サウンド・オブ・ミュージック』がトップに、『ドクトル・ジバゴ』が2位にランクインする(3位は『007 サンダーボール作戦』)。その後も両作の人気は衰えず、2020年5月15日時点での北米でのオールタイム・ボックスオフィス(インフレ調整後)では、『サウンド・オブ・ミージック』が3位に、『ドクトル・ジバゴ』は8位にランクインしている。


 2つの作品には共通点がある。偶然か否か、どちらもスタートの出遅れをスタジオのマーケティングと観客の口コミによって取り戻し、ロングランヒットとなったこと。そして、センセーショナルなサウンドトラックと迫力あるロケーション。戦乱の世にあって、危険を冒しても個人の思いを貫いた人々を描いた、人間ドラマであることだ。



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