深化を続けるバットマンとジョーカーの物語
『バットマン』を作り終えたバートンは初めての大作ということもあり、かなり消耗したようで、当時は続編を撮りたいとは、まったく思わなかったそうだ。しかし、『バットマン』が成功したことで、彼はクリエイティビティの自由を手に入れ、これまで以上に思い通りの作品を作れるような環境を作っていった。
続く『シザーハンズ』(90)で、はみ出し者に対して共感の視線を注ぐバートンのファンタジー・ワールドが開花したのはご存知のとおり。さらに『バットマン』の続編『バットマン・リターンズ』(92)では、ブルース・ウェインの心の闇を浮き彫りにしながら、新たな悪役ふたり、ペンギンとキャットウーマンにジョーカー以上の共感を注ぎ込み、快作に仕立て上げた。
マイケル・キートンは『バットマン・リターンズ』に再出演して、バートンが監督から降りるとともにその後のシリーズから降板。2014年のアカデミー賞作品賞受賞作『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で主演を務め、“スーパーヒーローを演じたことでブレイクし、その後演技派に転向しようと悪戦苦闘している俳優”というセルフパロディのような役を好演して称賛された。
『バットマン』BATMAN and all related elements are the property of DC Comics TM & (C) 1989. (C) 1989 Warner Bros. Entertainment Inc. TM & (C) 1998 DC Comics. All rights reserved.
プリンスは、ヒロインであるヴィッキーを演じたキム・ベイシンガーと恋仲になり、本作のエンドクレジットでフィーチャーされるナンバー“スキャンダラス”のシングル・バージョンでは彼女をコーラスに起用。また、自身の監督兼主演映画『グラフィティ・ブリッジ』(90)でもベイシンガーをヒロインに起用する予定だったが、破局によりこのプランは流れてしまう。
DCコミックはワーナーと提携し、その後もバットマンとジョーカーを何度となくスクリーンに登場させる。両者が再び相まみえることになったクリストファー・ノーラン版のシリーズ第2弾『ダークナイト』(08)や、『ジョーカー』(19)が、作品的に高い評価を得た上に記録的なヒットを飛ばしたことはご存知のとおり。
これらはキャラクターの複雑さを掘り下げ、人間の、さらには社会の闇を暴いてみせたが、その源流にバートン版『バットマン』があったことを見過ごすべきではないだろう。なお、バットマン映画の新作では、2022年にロバート・パティンソンが主演を務める『The Batman』の公開が予定されている。
文: 相馬学
情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO!シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。
『バットマン』
ブルーレイ ¥2,381+税/DVD ¥1,429 +税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
BATMAN and all related elements are the property of DC Comics TM & (C) 1989. (C) 1989 Warner Bros. Entertainment Inc. TM & (C) 1998 DC Comics. All rights reserved.
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