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『TENET テネット』IMAXプロローグ版に垣間見る、ノーラン映画の真髄

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『TENET テネット』IMAXプロローグ版に垣間見る、ノーラン映画の真髄

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時間を操るノーラン作品



 テロリストの襲撃とその戦いを描くだけの6分間だが、本作にまつわる重要なテーマもしっかりと垣間見ることができる。そう、予告編でも度々見られる「時間の逆行」だ。テロリストとの銃撃戦の最中、映像が巻き戻るような状況が一瞬だけ発生する。その後も何事もなかったかのように物語が進むため、ともすれば見逃してしまいがちだが、それでもしっかりとプロローグ映像の中に「時間の逆行」が描かれているのである。


 緊迫感溢れるアクションシーンの展開とIMAXフルサイズの臨場感も相まって、プロローグ鑑賞中は、ただただ圧倒されるだけなのだが、そんな中でも、何故か味方同士で戦うカットなども入り、単純な敵味方の構図では無いことが示唆される。圧倒的なアクションを見せつけるだけではなく、ノーランらしい複雑な構造も、たった6分間の中にしっかりと織り込まれているのだ。


 ノーランが「時間の逆行」を映画の中で描くのはこれが初めてではない。出世作となった『メメント』(00)でも、巻き戻る映像を見ることができる。『メメント』は、時間を遡って進行するカラーパートと、現在の時間通り進むモノクロのパートからなり、時間が逆行する構成をとっている。


『メメント』予告


 また、デビュー作『フォロウィング』も時系列が入り乱れる構成をとっており、徐々に詳細が分かるように作られている。『インセプション』(10)では、夢の階層に潜っていくに従って、時間の流れの速さが変わっていった。『インターステラー』(14)では、特殊相対性理論による時間の遅れを描き、『ダンケルク』(17)では、1週間、1日、1時間と3つの時間軸を交錯させ描いた。この「時間を操る」という構成は、もはやノーラン映画のテーマと言えるのではないだろうか。


 『メメント』の場合は、あくまでも映像効果として逆再生が使われていたが、どうやら『TENET テネット』の場合は、映像が逆再生しているのではなく、実際に時間が巻き戻っている現象として描かれているようだ。しかし現在、プロローグや予告編などの映像しか解禁されている情報はなく、全ては憶測の域を出ない。ただ一つ言えるのは、IMAXカメラで切り取られた圧倒的なアクションと、時間を操るテーマが示す通り、これが、正真正銘、徹頭徹尾、クリストファー・ノーランの映画であるということだけだ。


 7月10日現在、『TENET テネット』の公開日は、全米が8月12日、日本が9月18日となっている。何とか無事に公開日を迎え、劇場で、IMAXで、そしてIMAXフルサイズで、時間を操るノーラン作品を堪能出来ることを祈るばかりだ。



取材・文: 香田史生

CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。



作品情報を見る



『TENET テネット』

2020年 9月18日(金)全国ロードショー

配給:ワーナー・ブラザース映画

公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/tenetmovie/index.html

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