最後の一人になるまで戦う話
おそらく核戦争によって文明が一度崩壊した地球。荒廃した世界の北米大陸にあたる場所に生まれた独裁国家パネム。農耕や畜産、工業など生産業種別に12のエリアに分けられ、住人:労働者たちは首都「キャピタル」(キャピタルはそのまま「首都」という意味)で優雅な生活をおくる独裁的な大統領スノーによって統治されている。
パネムでは年に1度、12の地区から男女1人ずつ、24名が選出され、隔離された無人島の中で最後の1人になるまで殺し合いをする「ハンガー・ゲーム」が開催されている。第12地区の少女カットニス・エヴァディーンは、抽選により選出されてしまった妹の身代わりとして、ハンガー・ゲームへの参加を余儀なくされる。というのが『ハンガー・ゲーム』1作目のあらすじだ。
出版された当初から日本の「バトル・ロワイアル」や、スティーブン・キングの「死のロングウォーク」「バトルランナー」との類似が指摘されていた。
『バトルランナー』予告
ただ「バトル・ロワイアル」でデビューした高見広春は以降小説を書いていないし、キングもこの2作は若い頃に書き上げて、出版社に持ち込んだものの突き返されてしまった経緯がある。「最後の一人になるまで戦う話」というのは、若い作家の創作意欲を無闇矢鱈に刺激し、稀にフロック(まぐれ当たり)を生み出す題材なのであろう。
日本でも「バトル・ロワイアル」後、携帯小説ノリな稚拙な文章が良くも悪くも話題になりヒットを飛ばした「リアル鬼ごっこ」を筆頭に「最後の一人になるまで戦う話」は「デス・ゲームもの」と区分され、ゲームなどへも派生し、大きなジャンルになっている。
それら石も宝石も混ざってゴチャゴチャとある、正に玉石混淆とした「デスゲームもの」の中で『ハンガー・ゲーム』が「宝石」として抜きん出ているのは、メディア戦略を作品に取り込んでいる点であろう。