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『ハンガー・ゲーム』中高生が見る夢は、ポップスターの革命家

『ハンガー・ゲーム』中高生が見る夢は、ポップスターの革命家

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99%対1%



 集められたゲイリー・ロスら“一級のスタッフ”は、ある種“フロック”とも受け取られかねない物語の中に、一流らしい見事な“奥行き”を施す。『ハンガー・ゲーム』の舞台「パネム」のカットニスの住む炭鉱業地区は、ほとんど西部開拓時代の様相を呈している。狩り取った野鳥を食べ、ボロきれをまとう、爪に火を灯すような生活である。対して首都キャピタルに住んでいるのは富裕層のみ。ジャン・ポール・ゴルチエが目一杯悪趣味にデザインしたようなドレスやスーツをまとい、瀟洒なディナーを食べながら、貧民たちの殺し合いゲームを楽しんで見るのである。


 この対比はあからさまに当時の(そして現在の)アメリカの象徴である。アメリカ国内の富を、わずか1%の富裕層が独占し、99%の貧困層の上に成り立っている「99%対1%」の構造だ。




 しかし、そういった現状を象徴させながら、劇中の「ハンガー・ゲーム」は、現実の中高生たちの逃避先にもなっている。現実の中高生たちがリアリティ・ショーやオーディション番組に熱中するのは、エントリーする若者がスターダムを駆け上る様子を目撃して「自分より見劣りする奴でもレッドカーペットを歩くスターになれるのだから、自分だってできるハズだ!」と勘違いするためだ。劇中の「ハンガーゲーム」は、生存率の低い決死の闘いという事で恐怖の対象として描かれているが、実際に現在のアメリカで開催を告知したら、一発逆転、起死回生を狙った若者たちであふれるのではないだろうか?


 学校やバイト先で過ごす変わり映えの無い毎日。テレビのセレブたちを眺めて憂さ晴らしするよりも、テレビの向こう側へ行きたいと思っているはずだ。「別に死んだって構いはしない。どうせ生きていたってセレブ的な生活はできない。」と。「ハンガー・ゲーム」制度はまったく逆の意味で現実でも機能するだろう。そんな気持ちの受け皿として機能しているのが『ハンガー・ゲーム』1作目であり、その先に待つ暗い現実と確かな希望を見せるのが、『ハンガー・ゲーム2』以降の物語なのである。


 つまり、この閉塞した社会を打ち破る最良の手段とは「革命」なのである。



文: 侍功夫

本業デザイナー、兼業映画ライター。日本でのインド映画高揚に尽力中。



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(c)Photofest / Getty Images

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