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『ハンガー・ゲーム』中高生が見る夢は、ポップスターの革命家

(c)Photofest / Getty Images

『ハンガー・ゲーム』中高生が見る夢は、ポップスターの革命家

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リアリティ・ショーとしての『ハンガー・ゲーム』



 カットニスが“キャピタル”に到着すると、悪趣味に着飾った住人らにスターのように出迎えられる。あてがわれた部屋はホテルのロイヤルスウィート並み。三食豪華なメニューが用意される。専属スタイリストとトレーナーがつきっきりで面倒をみて、ゲーム開催までの間は殺人術の訓練とスポンサー受けを狙ったプロモーション活動に精を出させられる。


 「ハンガー・ゲーム」はかつて行われた叛乱に対する制裁措置と見せしめであると同時に「キャピタル」に住む富裕層の娯楽でもあるため、大々的なショーとして演出されるのだ。


 一夜にしてスター扱いされるカットニスらの境遇は、オーディション番組で生活を激変させたスーザン・ボイルや、ユーチューブを利用した活動から一気にトップアイドルへ駆け上がったジャスティン・ビーバーなどの「シンデレラ・ストーリー」の翻案とも言える。また、ハードな展開についてはリアリティ・ショー「サバイバー」の影響がかなり大きくあるだろう。



『ハンガー・ゲーム』(c)Photofest / Getty Images


 「サバイバー」は南国の孤島やジャングルに隔離された参加者たちが100万ドル(アメリカ版の金額:日本円で約1億円)をめぐり、ゲーム対決するというもの。特筆すべきは負けた側は「追放審議会」と呼ばれる投票会を強いられ、メンバーの中から「追放者」を選出するところだ。つまり、ゲームの勝敗はもとより、ゲーム中に垣間見せる「人格」や「ルックス」も生き残りの要素となるのだ。


 「ハンガー・ゲーム」劇中でもカットニスの「妹をかばっての参加」というバックグラウンドストーリーや、共闘していた仲間の死を思う様子、ラストの決断などが“良い行動”として受け取られ、彼女を助けていく。


 これらは取捨選択の判断材料が、本質を差し置いても「どう見えるか」を優先する、といった先鋭化した「映え」の理論と言えるだろう。この「映え」の理論は以降の『ハンガー・ゲーム』シリーズの重要な要素としてカットニスを悩ませ続けることとなる。



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