2020.09.16
脚本家たちの持ち味が反映された群像劇
ただし、骨格だけでは映画は成り立たない。特に『ディープ・インパクト』に欠かせないのは、作品の血となり肉となる「人間」という要素だ。彼らが入り乱れる迫真のドラマはどうやって築き上げられたのか。ここで命運を託されたのが二人の脚本家、ブルース・ジョエル・ルービンとマイケル・トルキンである。
まずルービンについて見てみよう。彼がこれまで手がけてきた作品は、SFスペクタクルと縁遠いものばかり。『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)、『マイ・ライフ』(93/監督も)と聞くと、「純粋な愛」や「生と死」というテーマ性が胸に蘇ってくる人も多いだろう。
こういった作風から考えるに、本作を構成する3つのストーリーラインが、それぞれに「生と死を見つめる人間たち」による「愛と感動のドラマ」として究極の形を成しているのは、ルービンの功績と言えるのではないだろうか。
『ディープ・インパクト』TM & COPYRIGHT (C)1998 BY DREAMWORKS L.L.C. and PARAMOUNT PICTURES and AMBLIN ENTERTAINMENT. ALL RIGHTS RESERVED.TM & Copyright (C) 2013 by DreamWorks LLC and Paramount Pictures and Amblin Entertainment. All Rights Reserved. Distributed by Paramount Home Entertainment Japan.
では、一方のマイケル・トルキンはどうだろう。彼の代表作として挙げられるのは、原作、脚本を務めた『ザ・プレイヤー』(92年/ロバート・アルトマン監督作)。ハリウッド・プロデューサー役のティム・ロビンスを中心に、映画業界内のありとあらゆる人々が入り乱れて、油断ならない人間模様を形作っていく異色作だ。
なるほど、多くの登場人物を効果的に配置し、時にチェスの駒を操るように、または緻密なパズルをはめ込んでいくように作品観を構築するあたり、トルキンには一日の長があったわけである。
これに加え、TVシリーズ「ER 緊急救命室」でスピード感あふれる群像劇を描いてきたミミ・レダーが監督登板するわけだから、『ディープ・インパクト』がおのずと「複数の人間たち」をフィーチャーするという特色を際立たせていったのも、当然といえば当然だろう。