本作で新定義された「スカーレット・ウィッチ」
もうひとつ、『ワンダヴィジョン』で話題を集めたのは、『X-MEN』シリーズでのピエトロ/クイックシルバー(エヴァン・ピーターズ)が登場したということ。ご存じの通り、『X-MEN』の映画化権は元々20世紀FOXが有しており、『アベンジャーズ』シリーズでのピエトロは、アーロン・テイラー=ジョンソンが演じていた。
ただ、『ワンダヴィジョン』が属する【フェーズ4】のテーマは、「マルチバース」。つまり、並行世界上のキャラクターが集結する可能性があるということだ。その布石は、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)で既に打たれており、サム・ライミ版『スパイダーマン』のキャラクターが登場することで、ファンは「マルチバースがついに実現した!」と色めきだったものだ。
そのため、『ワンダヴィジョン』で『X-MEN』版のピエトロが登場した際には、マルチバースが本格的に動き出したことを決定づけるサプライズだと多くの視聴者が思ったのだが、第8話で正体を明かした魔女アグネス(キャスリン・ハーン)による幻術だったことが明らかになる。つまり、第8話時点では、ピエトロの登場は厳密に言うとぎりぎりマルチバースではない、といえそうだ。第9話では、ラルフ・ボーナーというウェストビューの住人で、アグネスに操られていたということが判明する。
『ワンダヴィジョン』© 2021 Marvel
また、もうひとつ憶測を呼んだのは、ワンダが超能力を持つに至った経緯。第8話ではワンダがヒドラの研究所内でマインド・ストーン(ヴィジョンの力の源であり、最強の敵サノスが求めていたオーパーツ的な石)に適合したことで、能力を得たことも明かされる。その際に彼女が見た幻は何なのか?といった部分だ。
これに関しては、特徴的なシルエットから、スカーレット・ウィッチ(原作におけるワンダのヒーロー名)であると推察される。となるとワンダはスカーレット・ウィッチではないのか? もしくは彼女自身がスカーレット・ウィッチになるのか? 後者の場合は、テレキネシス(念力)とマインドコントロール(洗脳)以上の能力を発動するに至る“何か”が、ここで起こったと考えられる。
上記に関する回収は、第8話で行われる。アグネスがワンダを「スカーレット・ウィッチ」と呼ぶことで、「ワンダ自身がスカーレット・ウィッチになる」パターンであることが示されるのだ。となると気になるのは、MCUにおける「スカーレット・ウィッチ」が何なのか?というところだ。
アグネスは、現実改変能力のように、無から有を生み出す能力を「カオス・マジック」だと語る。ワンダには魔女の素質があったということなのだろうか? そして迎えた第9話で、アグネスはワンダに「ダークホールド(禁断の書物)にあなたのことが書いてある」と告げる。スカーレット・ウィッチは「作られる」ものであり、仲間も持たず、呪文も必要ない。世界を滅ぼす存在だと。ワンダは、神にも悪魔にもなる高次の存在、スカーレット・ウィッチになる宿命を背負った人物だったのだ。
となると気になるのは、同じ魔法を使う存在であるドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)との絡みである。この部分に関しては、以降の作品でつながることを期待したい。