『ベスト・キッド』あらすじ
シングルマザーである母親の仕事に都合によりカリフォルニアに引っ越してきたダニエル。新たな友達もでき、恋人も出来るなど順調な生活を送っていた。しかしそれも束の間、恋人の元彼がダニエルに理不尽な喧嘩をしかけ、ダニエルは叩きのめされてしまう。以来、ダニエルはいじめの対象となってしまい、いつの間にか彼の周りには恋人とアパートの管理人であるミヤギだけになっていた。あるパーティーの夜、ダニエルはいじめっ子に仕返しを試みるが逆に返り討ちにあってしまう。絶体絶命のダニエルであったが、そこにミヤギが現れ、あっという間にその場を制圧してしまう。実はミヤギはかつて第442連隊戦闘団に所属をしていた空手の達人であったのだ。そしてミヤギはダニエルに「自分の身を守るためなら」という条件の元、空手の訓練をさせる事を決意する。
Index
- 三船敏郎がオファーを蹴ってしまった“ミスター・ミヤギ”
- 脚本家ロバート・マーク・ケイメンの半自伝的青春ドラマ
- かつての“敵国人”が成し遂げたアメリカン・ドリーム
- 「第442連隊戦闘団」に込められた、ミヤギの悲哀
三船敏郎がオファーを蹴ってしまった“ミスター・ミヤギ”
筆者は、常々思っていた。三船敏郎が『スター・ウォーズ』(77)のオビ=ワン・ケノービ役のオファーを蹴ってしまった話は有名だが、もしそれを受けていたら、彼の役者人生はどれだけ激変していたんだろうと。
彼が日本を代表する国際スターであることは間違いない。『グラン・プリ』(66)、『太平洋の地獄』(68)、『レッド・サン』(71)と、多くの海外作品にも出演。その一方で『スター・ウォーズ』という千載一遇のチャンスを逃してしまい、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(83)のアナキン・スカイウォーカー役(ダース・ベイダーのマスクを外したときの姿です)のオファーまで断ってしまっているのだ。勿体ないことこの上なし!『1941』(79)の潜水艦艦長のオファーは受けたのに、なんでそっち断っちゃうの!
『ベスト・キッド』予告
いや、最も悔やまれるのは『スター・ウォーズ』(77)のオビ=ワン・ケノービ役ではなく、『ベスト・キッド』のミスター・ミヤギ役を断ってしまったことかもしれない。「普段は盆栽好きなアパートの管理人だが、実はカラテの達人」というこの役に、監督のジョン・G・アヴィルドセンはトシロー・ミフネを考えていた。しかしその想いは成就せず、オーディションの末にノリユキ・パット・モリタがミヤギ役を獲得する。
沖縄出身の日系二世である彼は、スタンダップ・コメディアンとしてキャリアをスタート。CMやTVのゲスト出演を経て、青春コメディ・ドラマ『ハッピーデイズ』のアーノルド役でブレイクを果たした苦労人だ。背は低く、撮影当時50歳そこそことは思えないほどの老け顔。見た目もキャリアも三船敏郎とは正反対だ。トーゼン、上層部はパット・モリタの起用に難色を示す。しかし、オーディションでの彼の演技は圧巻だった。そこには、まごうことなきミスター・ミヤギがいた。
パット・モリタは、本作の演技が評価されてアカデミー助演男優賞にノミネートされる。『ベスト・キッド』は、彼が出演することで映画の説得力とユーモアが格段に増したのだ。