© 1976/Renewed © 2004 Warner Bros. Entertainment Inc. and Wildwood Enterprises Inc. All rights reserved.
『大統領の陰謀』若き新聞記者たちの情熱が刻印された、崇高なまでのジャーナリズム精神
超一流の俳優たちによる、超一流の演技アンサンブル
『大統領の陰謀』は、ほとんどボブ・ウッドワードとカール・バーンスタインが取材対象に電話をかけるか、実際に自宅に押しかけて話を聞くだけでストーリーが進行する。派手なアクションも、めくるめくようなラブロマンスもない。画的にはめちゃめちゃ地味な作品なのだ。そのぶん、俳優たちのリアリティある芝居が要求される。
ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンは、役作りのため実際にワシントン・ポストの会議に参加。新聞記者の生態を観察することで、少しずつキャラクターを膨らましていく。さらに二人は、自分のセリフだけでなく相手のセリフまで完全にインプット。撮影中、自分のパートではないセリフをあえて挟むことで芝居に緊張感が生まれ、作品に並々ならぬリアリティが付与された。
脇を占めるキャラクターも、ベテランの名優たちが招集される。編集主幹ベン・ブラッドリー役を貫禄たっぷりに演じるのは、ジェイソン・ロバーズ。ウッドワードとバーンスタインが血の滲むような努力で書いた記事を、「(一面の記事は)無理だね」、「裏付けをとれ」と冷徹に言い放つ一方、「(窮地に陥った)二人を見捨てるな」と激アツなセリフもカマす。最高の上司ではないか!
『大統領の陰謀』© 1976/Renewed © 2004 Warner Bros. Entertainment Inc. and Wildwood Enterprises Inc. All rights reserved.
ジェイソン・ロバーズは脚本を読んで、「編集主幹の存在が、常に映画のなかで感じられるようにする必要がある」と判断。自分の出演シーンがない日も撮影現場に来て、映りもしないのにセットのオフィスで本を読んでいたという。役者魂を感じずにはいられないエピソードだ。ロバーズはこの演技が認められてアカデミー賞助演男優賞を受賞。その翌年には『ジュリア』(77)のダシール・ハメット役で、二年連続の助演男優賞に輝いた。
社会部長ハワード・ローゼンフェルド役はジャック・ウォーデン、編集局長ハワード・シモンズ役はマーティン・バルサムという、『十二人の怒れる男』(57)で共演しているいぶし銀が参加。謎の情報屋ディープ・スロート役には、『ダーティハリー2』(73)のブリッグス警部補役で知られるハル・ホルブルックが選ばれた。
『大統領の陰謀』は、主演の若い二人をベテラン俳優たちがしっかりサポートすることで、ドラマとしての濃度が劇的に高まったのである。