2021.04.07
『E.T.』のハートウォーミング
スピルバーグ作品を代表する『E.T.』(82)は公開当時、社会現象とも言える超特大ヒットを飛ばした。まだ映画館における「座席指定」や「入れ替え制」が無い時代。人々は上映開始前から映画館に長蛇の列をなし、終映に合わせて出てくる人々をかき分けて場内へなだれ込んで行った。渋谷の上映館では、あまりの列の長さに鑑賞を諦めた人々が、隣の映画館で上映していた『食人族』(80)を鑑賞したため、異例のヒットを飛ばしたという伝説まで残している。
もちろん香具師たちがそんな作品を放っておくハズも無く「パクリ」映画も多く作られた。メジャー・スタジオがそれなりに換骨奪胎を図って作った、『マック』(88)や『ナビゲイター』(86)といった作品から、『ヌーキー』(87)など、海のものとも山のものとも知れない作品まで、玉石混交(石多め)とした、様々な「E.T.」が誕生した。
『E.T.』予告
『ショート・サーキット』は発想のきっかけこそ、大学向けのロボットに関する資料ビデオをプロデューサーが目にしたことから始まっているが、企画を通す段階で「ロボット版のE.T.」だと説明したであろうことは想像に難しくない。実際、ナンバー5とステファニーの出会いの場面では「私を選んでくれてありがとう!」と、東西南北どこから見てもロボットなナンバー5を宇宙人だと思い込む様子が描かれているし、ナンバー5を家へ招き入れ、雑貨類を説明していく場面は『E.T.』への明確なオマージュだ。
また、人間以外のピュアな存在と心を通わせるという『E.T.』の根幹となるファミリー向けな展開は、『ショート・サーキット』にも色濃く反映されている。