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『悲しみよこんにちは』意図せず重なってしまう、ジーン・セバーグとフランソワーズ・サガンの人生

(c)Photofest / Getty Images

『悲しみよこんにちは』意図せず重なってしまう、ジーン・セバーグとフランソワーズ・サガンの人生

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『悲しみよこんにちは』あらすじ

父と2人暮らしの17歳の少女セシル。南仏の別荘で父レイモンと若い愛人エルザの3人で幸せに暮らしていたが、亡き母の親友だったアンヌが一家の前に現れる。アンヌはやがてレイモンと親密になり婚約。それを知ったセシルはレイモンとアンヌの仲を引き裂こうとする。


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ジャンヌ・ダルクの復讐



 「早く走りすぎている。高く飛びすぎている。強く殴りすぎている。目を開きすぎている。力を入れすぎている。私の傷口は深すぎる。キスの時間はあまりに短すぎて・・・・・」(ジーン・セバーグ)*


 デビュー作『聖女ジャンヌ・ダーク』(オットー・プレミンジャー監督/57)の、ロンドンでのプレミア上映に向かうジーン・セバーグが、飛行機の中で書き残した未完成の詩には、この伝説的な女優がその後送ることになる数奇な人生を、恐ろしいほど予見している。


 『風と共に去りぬ』(ヴィクター・フレミング監督/39)でヴィヴィアン・リーが演じたスカーレット・オハラ役以来の、全米をまたぐ一大オーディション(無名時代のジェーン・フォンダやバーバラ・ストライサンドもこのオーディションを受けていた)で、気難しいオットー・プレミンジャーを喜ばせた、17歳のまだ髪の長いジーン・セバーグのアーカイブ映像が残されている。


 オーディション映像のジーン・セバーグは、スポットライトを浴びることでより一層に輝く。そのキラキラした表情と自信に溢れた発声の裏に、どこか隠しきれない影を纏っている。その影は、17歳の少女が実際の自分より大きく表現するために不安を隠そうとする危うげな影よりも、はるかに大きい。


『悲しみよこんにちは』予告


 オーディションに合格後、ジャンヌ・ダルク役を演じるために伸ばしていた髪を大胆にカットすることを命じられた、ジーン・セバーグの笑顔に溢れた写真は(これが映画史のターニングポイントとなる!)、オーディション映像に滲んでいた影とは対照的に、未来を約束されたスターが放つ希望の輝きに溢れている。


 晩年のジーン・セバーグが出演している『孤高』(フィリップ・ガレル監督/74)は、その極北に位置する作品だが、ジーン・セバーグは映像というメディアの中にこそ、その影を纏い続ける。この明暗のコントラストこそが、ジーン・セバーグという伝説的な女優の生来の素質を如実に表している。


 アイオワ州の田舎町マーシャルタウンの希望を一身に受け、盛大に送り出されたジーン・セバーグ。しかし、『聖女ジャンヌ・ダーク』が興行的にも批評的にも大失敗に終わり、ジーン・セバーグはデビュー作から失敗の烙印を押されることになる。また、火刑台のシーンで負った傷や、暴君とも呼ばれたオットー・プレミンジャーから受けた撮影現場での数々の理不尽なパワーハラスメントは、ジーン・セバーグの心身において、一生残る傷となってしまう。


 一方でジーン・セバーグは、撮影現場でのオットー・プレミンジャーからの挑発に、挑発の言葉で返答する惚れ惚れするような強さを持っていたことも、共演者の証言の記録として残されている。ハリウッドから失敗の烙印を押されたものの、ジーン・セバーグは、オットー・プレミンジャーと長期契約を交わしていたため、フランソワーズ・サガン原作の『悲しみよこんにちは』(57)でも再び主演を務めることになる。オットー・プレミンジャーとジーン・セバーグの複雑な師弟関係においても、『悲しみよこんにちは』は『聖女ジャンヌ・ダーク』への批判に対するリベンジだった。


 「あの娘にはまったく才能がないという意見に対しては断固反論する。」(オットー・プレミンジャー)


*ギャリー・マッギー著「ジーン・セバーグ」(水声社)より。ギャリー・マッギーの制作したジーン・セバーグのドキュメンタリー『Movie Star: The Secret Lives of Jean Seberg』の公開が待ち望まれる。




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