イーニドとレベッカの誕生
当初、ソーラ・バーチはイーニド役ではなくレベッカ役をオファーされたという。テリー・ツワイゴフ監督は、『アメリカン・ビューティー』(サム・メンデス/99)で、疎外を感じている少女を既に演じていたソーラ・バーチとのイメージの重なりを避けたかったのだという。しかし、ソーラ・バーチのイーニド役へのただならぬ熱意が、監督を翻意させる。イーニド役を演じるために、ソーラ・バーチは20キロもの体重の増量に挑んでいる。ソーラ・バーチはこのときの強い思いを、次のように振り返っている。
「このキャラクターと世界観に惚れ込んでいました。最初に脚本を読んだとき、イーニドは、私が言いたいことの多くを私が言いたいように言ってくれる人物として私に語りかけてきたのです。(中略)だからこそ、この映画は私にとって個人的な映画なのです。」(*1)
『ゴーストワールド』(c)Photofest / Getty Images
一方、レベッカ役を演じたスカーレット・ヨハンソンは、『モンタナの風に抱かれて』(ロバート・レッドフォード/98)での演技が称賛され、天才子役として注目を集めて以降、自身の納得できる企画に出会える日を辛抱強く待っていた。『のら猫の日記』(リサ・クルーガー/96)と『モンタナの風に抱かれて』でのスカーレット・ヨハンソンの演技に感銘を受けていたテリー・ツワイゴフは、スタジオ側の反発を押し切って彼女を抜擢する。ロバート・レッドフォードがスカーレット・ヨハンソンのことを「30歳になろうとしている13歳」(*2)と評していたのと同じような言葉で、テリー・ツワイゴフは彼女を称賛している。
「スカーレットは当時まだ15歳でしたが、少し年上を演じるだけの落ち着きがありました。それどころか、おそらく35歳を演じたとしても十分な落ち着きを持っていたのです。」(*3)
ソーラ・バーチとスカーレット・ヨハンソンは、撮影の合間、頻繁に一緒に過ごしていたという。二人はチャンスがあれば、近くのテーマパークに遊びに出掛けていた。『ゴーストワールド』のメイキング映像には、撮影中に二人が仲睦まじく抱き合っている微笑ましい様子が収められている。スカーレット・ヨハンソンは、出演者もスタッフも一つのチームのようだったと、あまりにも楽しかった本作の撮影を振り返っている。
「スカーレットとソーラを抜擢したのは、、、二人ともちょっと変わったところがあるからさ。二人のセリフ回しは実に風変わりで、絶妙で、完璧だったよ。」(テリー・ツワイゴフ)(*2)
*1 THora Birch On The Cult Legacy Of ‘Ghost World’(UPROXX.com)
https://uproxx.com/movies/thora-birch-uproxx-interview-ghost-world/
*2 ブランドン・ハースト著『スカーレット・ヨハンソン 彼女が愛される理由』(P-Vine Books)
*3 The Sly Poetics of Terry Zwigoff(Interview Magazine.com)
https://www.interviewmagazine.com/film/terry-zwigoff-metrograph