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『ダークナイト』IMAXフィルム撮影を劇映画に取り入れたノーランの野心とは

『ダークナイト』IMAXフィルム撮影を劇映画に取り入れたノーランの野心とは

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50万ドルのカメラを破壊しても強行した前代未聞の撮影現場



 『ダークナイト』はノーランが最初にIMAX撮影を試みた作品であることは述べた。しかしノーランも撮影監督のウォーリー・フィスターもIMAXの経験はなく、まさにゼロから模索する段階からのスタートだった。Blu-rayに収録されているメイキング映像によると、ノーランは初日にIMAX撮影を敢行した。息をのむような空撮ショットで始まる、冒頭の銀行強盗のシーンである。


 巨大なIMAXカメラの中でも一番サイズの小さいものをステディカムの装置に付けて手持ち撮影を試みたら、金属製のポールが折れ曲がってしまったというから、いかにノーランやスタッフにとっても想定外だったかがわかる。IMAXを使うシーンから撮影をスタートさせたことは、ノーランの関係者に対する決意表明にも思えるが、失敗するなら最初に、という気持ちもあったかも知れない。


 というのも、IMAXで撮ったファーストシーンの出来栄えに気をよくしたノーランとプロデューサー陣は、スタジオ側に「もっとIMAX撮影のシーンを増やしたい」と交渉、空撮全般や夜間のカーチェイスなど、多くの場面でIMAXカメラが使用されることになった。つまりノーランが推し進めようとしていたIMAXプロジェクトの行方は、『ダークナイト』のファーストシーンにかかっていたのだ。




 IMAXカメラを使うことでの困難は他にもいくつもあった。カメラだけでなくフィルムの重さも半端なく、フィルム装填すると重量は50キロに及んだ。それでもノーランとフィスターは安定した台車に載せるドリーショットだけでなく、人力で担いでの手持ち撮影をやってのけた。また撮影時のカメラが発する動作音も大きく、同時録音ができない事態がしばしば発生。冒頭の強盗シーンの音響はほぼ後から付け直したものだという。


 有名な話だが、シカゴの公道を使って撮ったカーチェイスでは激走する車両の真ん中にIMAXカメラを持ち込み、当時世界に4台しかなかったというIMAXカメラの一台を大破させている。ノーランは「フィルムが無事でよかった」とIMAX社の人が聞いたら卒倒するようなコメントをしているが、その後も一台50万ドルすると言われるIMAXカメラをオシャカにする常習犯となり、『ダンケルク』で水没させてしまったこともニュースとなった。いずれにせよ、現在、ノーランほどIMAXの可能性を探求し続けている映画作家は他にいない。


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