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『1984』すでに空想の産物ではなくなってしまった全体主義への予見と警鐘

(c)Photofest / Getty Images

『1984』すでに空想の産物ではなくなってしまった全体主義への予見と警鐘

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ジョージ・オーウェルが恐れていたもの



 この映画の公開から今日まで、ソ連共産主義の崩壊、インターネットの誕生、そしてプーチンやトランプの台頭を目の当たりにしてきた。そしてそれらは、この映画で描かれているような独裁国家や、それと類似する体制への予兆のように感じられた。


 英国の作家、ジョージ・オーウェルが1949年に発表した近未来小説「1984」が、反共主義者のバイブルとして長らく耽読されていることはよく知られているはずである。オーウェルが1945年ごろから小説を書き始めたとき、彼が恐れていたのはファシズムやナチズム、中央集権的経済、そして大勢順応主義などが定着し、世界が全体主義の傀儡と化してしまうことであった。実際、その予見はある意味では的中している。


『1984』予告


 しかし、オーウェルの「1984」は、スターリン体制下でのソ連や英国労働党のような社会主義全般の脆さを暴露したものであって、厳密には未来を予測した話ではない。第二次大戦中から大戦後にかけての、全体主義のほころびを辛辣に暴いているだけである。作中に登場する未来国家の指導者ビッグ・ブラザーはソ連のスターリンさながらに権力を行使し、反政府組織の中核人物と目されるゴールドスタインは、「あごひげを生やした小柄な男」という描写からもレフ・トロツキーを想起させる。


 「1984」は、オーウェルや彼と同じ世代の人々が、すでに経験している全体主義の支配への戒めを込めた物語として書かれたはずである。それにもかかわらず、全体主義や管理社会などを標榜する国家は、危うさを伴いながら今も存在していることに警戒しなくてはならない。


 マイケル・ラドフォード監督がオーウェルの構想を見事に撮りあげた本作は、3つの全体主義国家によって分割統治された未来世界の恐怖を描くとともに、オーウェルが小説を書いていた40年代当時の惨憺たる戦後世界を描くことにも成功している。


 ジョン・ハートはやせこけた身体とシワだらけの顔で、オーウェルが思い描いた主人公ウィンストン・スミスを完璧に演じている。スミスの職務内容は、愛や個性や娯楽を禁じる未来国家オセアニアの外部党員として過去の公文書を偽造すること。強大な国家権力に操られながらも自らの強い意志を貫こうとするスミスだったが、そこに公権力の魔の手が迫ってくる。




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