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『17歳のカルテ』永遠を生きるウィノナ・ライダーの自画像 ※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Images

『17歳のカルテ』永遠を生きるウィノナ・ライダーの自画像 ※注!ネタバレ含みます。

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永遠を生きる



 「なぜ私のハートはまだ鳴っているの?なぜ私の目はまだ涙を流しているの?この世は終わったと気づかないのかしら?あなたが"さよなら"を告げたとき」(「エンド・オブ・ザ・ワールド」)


 リサに対して脅威を感じながら激しく惹かれてしまうスザンナ。無意識な彼女のアンビバレントな感情。ある日、スザンナとリサは施設を脱走する。ここで二人が何気なくキスを交わすショットは現在でも語り継がれているハイライトの一つだ。このときスザンナはリサという脅威を受け入れている。


 二人は退院したデイジーの家へと向かう。リサは残酷なくらい正直な言葉でデイジーを傷つけてしまう。翌朝、スキータ・デイヴィスの歌う「エンド・オブ・ザ・ワールド」のレコードが延々とリピート再生される部屋でスザンナはデイジーの自殺を目撃する。現在の視点で振り返るとき、デイジーを演じたブリタニー・マーフィーが32歳の若さで亡くなってしまったことを考えると、このシーンはあまりにも悲痛だ。ウィノナ・ライダーはブリタニー・マーフィーのことを思い出してしまい、本作を見直すことができないと語っている。



 『17歳のカルテ』(c)Photofest / Getty Images


 スザンナに退院のときがやってくる。スザンナは日記を奪われ、リサに日記の内容を読み上げられる。逃げるスザンナと追いかけるリサ。地下の廊下における暗闇がホラー映画のように機能している。スザンナの書いた日記は、仲間の物語を搾取している。スザンナはある意味ここで罰を受けることになる。と同時に、スザンナの日記はリサに彼女が気づいていない事実を突きつける。リサが求めていた感情、生への渇望は、彼女に欠落しているものではない。最初から持っていることに気付いていないだけなのだ。『オズの魔法使』の登場人物たちがそうだったように。


 スザンナは別れの際にリサの爪にマニュキュアを塗る。リサは12歳からこの施設の「囚われの女」として生きている。リサのこれからの人生が苦しいものになることは誰の目にも明らかなだけに、この別れのシーンには痛みが走る。しかし映画は「さよなら」を永遠のものとして記録することができる。彼女たちが「中断されてしまった少女」を演じた美しい記録は永遠に残り続ける。


 スザンナ役がこの時期のウィノナ・ライダーの自画像であったように、本作にはこの時期の彼女たちにしか残せない永遠の生き方が刻まれている。永遠とは誰かが生きた瞬間の集積なのかもしれない。砕け散ったガラスの破片の集積。『17歳のカルテ』という映画がスザンナ・ケイセンの原作に捧げる最大の功績は、彼女たちが生きた瞬間を捉えたこの尊い記録に他ならない。永遠のウィノナ。永遠を生きる彼女たち。


*1 Big Star [Girl, Interrupted: Winona Ryder Interview by Prairie Miller]

*2 Golden Gloves [Out of the Archives : Angelina Jolie About“Girl,Interrupted”]

*3 Cinephilia & Beyond [‘Be Inspired to Try Things, Miracles Happen When Someone Takes a Chance’: A Conversation with James Mangold]


参考資料:

「思春期病棟の少女たち」 (草思社文庫) 文庫 スザンナ ケイセン  (著),吉田 利子 (翻訳)

『17歳のカルテ コレクターズ・エディション』 [DVD]:音声特典・特典映像



映画批評。「レオス・カラックス 映画を彷徨うひと」、ユリイカ「ウェス・アンダーソン特集」、リアルサウンド、装苑、otocoto、松本俊夫特集パンフレット等に論評を寄稿。





(c)Photofest / Getty Images

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