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『トロン:レガシー』CG・デザイン・新技術にこだわりぬいたジョセフ・コシンスキー監督デビュー作 後編 ※注!ネタバレ含みます。
※本記事は物語の核心に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。
『トロン:レガシー』あらすじ
巨大企業エンコム社のCEOとなったケヴィン・フリンは、息子サム1人を残して、突然、失踪してしまう。20年後、27歳に成長したサムは父親に捨てられたという哀しみや不信感が拭えず、決してエンコム社の経営に関わろうとはしなかった。サムの前に、ケヴィンの共同経営者だったアランが現れ、失踪前のケヴィンから預かっていたポケベルに、謎のメッセージが届いたと告げる。発信源は、かつてケヴィンが所有していたゲームセンターだった。廃墟となったゲームセンターを訪れたサムは、地下に秘密の研究室を発見する。そこには、電源が入ったままのコンピューターがあった。サムがログインすると、背後に置かれていた物質転換装置が稼働し始め、彼はデジタイズされてしまう。あわてて外に飛び出したサムは、そこが見慣れない世界になっていることに驚愕する…
『トロン:オリジナル』(82)から、直接の続編として企画された『トロン:レガシー』(11)は、『トップガン マーヴェリック』(22)で大ヒットを飛ばしたジョセフ・コシンスキーの監督デビュー作である。今回は洗練されたデザインや、撮影・上映システムを中心に述べる。
※前編はこちら
Index
あらすじ③
サム・フリン(ギャレット・ヘドランド)は、父親であるケヴィン(本物のジェフ・ブリッジス)に、「いっしょに現実世界へ帰ろう」と促す。だがケヴィンは、サムがここにやってきた経緯を聞き、これはクルー(3DCGのブリッジス)の罠だと気付く。クルーたちプログラムが現実世界に出て行くためには、ポータル(出入り口)を通過するためのマスターキーである、ケヴィンだけが持つ特別なディスクが必要なのだ。クルーは、ケヴィンをグリッド(トロンシステムの内、開発が進んだ地域)の中におびき出すため、サムを利用しようとしたのである。ケヴィンはクルーの手にディスクが渡らぬように、隠れ家から動かないと決める。
一方サムは、ISO(Isomorphic Algorithms)のクオラ(オリヴィア・ワイルド)から、信頼できるポータルまでの案内人として、レジスタンスのズースを紹介される。サムは、ケヴィンが作ったライトサイクルを盗み出し、トロン・シティの中心部を目指した。しかし、ズースがどこにいるか分からない。すると、サムがコンピューター内にやって来た時、最初に出会った女性であるジェム(ボー・ガレット)が現れ、「エンド・オブ・ライン・クラブ」のオーナーであるキャスター(マイケル・シーン)に姿を変えたズースの所へ連れて行く。
『トロン:レガシー』(c)Photofest / Getty Images
だが、すでにキャスターはクルーに寝返っており、サムを大勢の男たちに襲わせる。そこに助けに入ったのがクオラだったが、左腕を失って意識を無くしてしまう。この窮地に現れたのは、命の危険を顧みずサムを追って来たケヴィンだった。だがクラブから脱出する際に、キャスターに自身のディスクを奪われてしまう。そこに登場したクルーに、キャスターはディスクを高く売りつけようとするが、タダで取り上げられたあげく、クラブごと爆破されてしまう。
ケヴィンは、サムとクオラをポータルへ向かうソーラーセーラーに乗せる。ケヴィンはその船内で、ISOのデジタルDNAの欠損箇所を修復してクオラを復活させた。だがソーラーセーラーは、ポータル・ステーションではなく、クルー・キャリア(空中戦艦)に到着する。ソーラーセーラーは、ここに大量の奴隷化されたプログラムたちを運んできており、次々と戦士へ改造されていた。クルーは戦士たちに「運命の時は来た。人間の世界を我々のものに。人類というシステムの不完全性を排除するのだ!!」と叫ぶ。つまりクルーの目的は、現実世界の支配だったのだ。