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『レディ・プレイヤー1』天才同士の築いた“創造世界”が交わる秘密とは ※注!ネタバレ含みます。
2018.05.07
『シャイニング』の引用は、原作と映画の関係性を皮肉っている?
しかし、原作と映画との差異に言及しだすと、『シャイニング』という入れ子の器となった『レディ・プレイヤー1』自体が、原作である『ゲームウォーズ』とは大きく展開を異にしており、また『シャイニング』でキューブリックが反スーパーナチュラルを主張したレベルで、本作においてスピルバーグはVRに対する自分のスタンスを声高にアピールしている。
さいわい原作者のアーネスト・クラインとは良好な関係を築いていたようだが(もっとも原作者とて、スピルバーグに反抗する勇気はないだろうが)。以上のことを踏まえると、本作における『シャイニング』の挿入は、なんとも皮肉めいていて可笑しい。
なにより原作改変という点でスピルバーグは、『ゲームウォーズ』に多数あった自身のリファレンス(『インディ・ジョーンズ』シリーズetc)を徹底的に取り払い『レディ・プレイヤー1』を成立させている。
その代わりに、劇中では己れを取り巻いた80年代カルチャーや、彼と共に仕事をしてきたロバート・ゼメキスやクリス・コロンバスといった仲間の業績、そして自身に大きな影響を与えた映画などをクローズアップさせることで、スピルバーグという本尊を透かし彫りのごとく見えるようにしているのだ。
『レディ・プレイヤー1』(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTSRESERVED
とりわけ本作における『シャイニング』の引用は、キューブリックとの関係性や『レイダース』を邪魔立てされた苦い思い出を含め、スピルバーグにとってはもっとも私史を象徴するリファレンスなのかもしれない。
参考文献
Rodney Hill, Gene D. Phillips“THE ENCYCLOPEDIA OF STANLEY KUBRICK”Checkmark Books
「 地球に落ちてきた男 スティーブン・スピルバーグ伝」ジョン・バクスター 著/野中邦子 訳(角川書店)
「 コンプリート スティーヴン・キング」奥澤成樹、風間賢二 編著(白夜書房)
「 ゲームウォーズ」アーネスト・クライン 著/池田真紀子 訳(SB文庫)
「 メイキング・オブ・レディ・プレイヤー1」ジーナ・マッキンタイヤー 著/五十嵐涼子 訳 (スペースシャワーネットワーク)
映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「熱風」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」などがある。加えて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。
『レディ・プレイヤー1』
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト: http://wwws.warnerbros.co.jp/readyplayerone/
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※2018年4月記事掲載時の情報です。