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『ファイブ・イージー・ピーセス』若きジャック・ニコルソン自身を投影した虚無感

(c)Photofest / Getty Images

『ファイブ・イージー・ピーセス』若きジャック・ニコルソン自身を投影した虚無感

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『ファイブ・イージー・ピーセス』あらすじ

石油採掘場で働くボビーは、何事にも熱意を感じられず、自堕落な日々を送っていた。ある日同棲相手のレイが妊娠。結婚するのを面倒に思い、彼女と別れようと考えるが、姉から大病で父が倒れたという事を聞かされ、まだ別れられないレイを連れて実家に向かう。3年ぶりに帰郷すると、そこにはまた新しい現実が待ち受けていた…。


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アメリカン・ニューシネマを代表する1本



 1960年代後半から70年代にかけて、ハリウッドには“アメリカン・ニューシネマ”と呼ばれる作品群が登場した。67年にアメリカの雑誌“TIME”で特集された<ニューシネマ>が語源で、最初にそう呼ばれたのは『俺たちに明日はない』(67)だった。当時のアメリカでは公民権運動やべトナム戦争への反戦運動などが盛り上がり、既成のハリウッド映画とは異なる価値観を示した作品が続々と作られた。


 アメリカン・ニューシネマには、それまで光の当たらなかった社会のアウトサイダーを描いた作品が多く、ダスティン・ホフマンとジョン・ヴォイトがニューヨークの底辺で生きる人物に扮した『真夜中のカーボーイ』(69)は、ショッキングな内容であったにもかかわらず、鋭い人間描写が評価されてアカデミー作品賞を受賞した。また、ピーター・フォンダとデニス・ホッパーが主演した『イージー・ライダー』(69)はインディペンデント作品として作られ、メジャーのコロムビア配給となったが、こちらも主人公たちが最後は銃殺されるという衝撃的な展開であるにもかかわらず、最も商業的な成功を収めた独立系作品となった(日本でも大ヒットを記録した)。


『ファイブ・イージー・ピーセス』予告


 そんな『イージー・ライダー』の姉妹編的な作品として登場したのが、『ファイブ・イージー・ピーセス』(70)だった。主演は『イージー・ライダー』で自由な思想を持つ弁護士役を演じてアカデミー助演男優賞候補となったジャック・ニコルソン。製作はインディペンデント系のプロダクション、BBSだった。BBSの前身はレイバート・プロダクションで、60年代のテレビの人気番組「ザ・モンキーズ」(66~68)で成功を収め、製作を手がけた『イージー・ライダー』が大ヒット。中心になった人物はボブ・ラフェルソンとバート・シュナイダーだった。ふたりの頭文字のBをふたつ重ね、その後、参加したSこと、スティーヴン・ブラウナーの加入によって、新しいスタートを切ることになった。他にもピーター・ボグダノヴィッチ監督の『ラストショー』(71)、べトナム戦争を題材にしたドキュメンタリー『ハーツ・アンド・マインズ』(74)など70年代を代表するクオリティの高い作品がBBSで生まれることになる。


 この会社の中心人物のひとりであり、『ファイブ・イージー・ピーセス』の監督だったラフェルソンは、2022年7月23日にガンでこの世を去った。かつてインディペンデント映画界の新しい可能性を切り開いたラフェルソンの追悼もかねて、彼の代表作『ファイブ・イージー・ピーセス』の魅力を振り返ってみたい。




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