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『すずめの戸締まり』新海誠が描く災禍との対峙、心の復興

(C)2022「すずめの戸締まり」製作委員会

『すずめの戸締まり』新海誠が描く災禍との対峙、心の復興

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天災と人間の関係を描く新海イズム



 2019年の夏、新海監督の中に初期構想としてあったのは「場所を悼む物語」「少女が異形の者と旅をする物語」だったという。どちらも、『すずめの戸締まり』を象徴する要素だ。


 ここで、『すずめの戸締まり』のあらすじについて紹介したい。まさに「場所を悼む物語」「少女が異形の者と旅をする物語」である本作は、九州で暮らす女子高生・すずめ(声:原菜乃華)が旅の青年・草太(声:松村北斗)と出会うことで運命が大きく動き出すさまを描いている。「この辺りに廃墟はない? 扉を探してるんだ」という草太を追って廃村に足を踏み入れたすずめは、不思議な扉を見つける。これは後戸(うしろど)と呼ばれ、そこから災いが訪れるのだという。草太は「閉じ師」として、人の心の消えたさみしい場所=全国の廃墟に出現する後戸を閉め、人々の暮らしを守っていたのだ。


 しかし、封印に使われていた要石(かなめいし)が謎の猫・ダイジン(声:山根あん)として顕現し、ダイジンの怒りを買った草太は椅子に姿を変えられてしまう。時を同じくして、日本各地で次々と後戸が開き始める。災いを止めるため、そして草太を元の姿に戻すため、すずめはダイジンを追って“戸締まり”の旅に出ることになる――。



『すずめの戸締まり』(C)2022「すずめの戸締まり」製作委員会


 ここでいう「災い」とは、地震のことだ。後戸が開くと、そこから「ミミズ」が這い出して来る。そしてミミズが地面に倒れると、大規模な地震が発生してしまう。『君の名は。』は彗星、『天気の子』は雨と晴れ、そして『すずめの戸締まり』は地震。元々新海監督の作品には「星」や「空」といった共通項があるが、『君の名は。』以降顕著になった、天災と人間を描く新海監督の特徴を引き継いだ物語が『すずめの戸締まり』でも展開する。


 そこに日本古来の信仰や伝承・伝統文化が絡んでくるのも同様で、『君の名は。』『天気の子』で描かれた巫女のように自然と対話し、鎮める存在が、『すずめの戸締まり』では閉じ師として描かれる。また後戸は仏教用語で、仏堂の後ろにある扉を指すもの。そこから鬼や厄災が出現するともいわれている。要石は地震を鎮めるとされる霊石で、神社の境内にあるものだ。しめ縄や祠のように、災いが染み出さないような結界を形成するアイテムともいえるだろう。これがエスカレートすると人柱や生贄になり、『天気の子』ではその部分への言及もみられた。


 いわゆる「セカイ系」と呼ばれるような、ミニマムな関係性が世界の命運に直結するフォーマットを基点にしつつ、そこに日本土着の要素を盛り込んでいく新海監督の作品群。そうした意味では『すずめの戸締まり』は極めて新海イズムを感じられる正統派な作品なのだが、興味深いのは「震災」をダイレクトに描いている点だ。





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