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『すずめの戸締まり』新海誠が描く災禍との対峙、心の復興

(C)2022「すずめの戸締まり」製作委員会

『すずめの戸締まり』新海誠が描く災禍との対峙、心の復興

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「震災」と真正面から向き合った物語



 特に東日本大震災以降、震災をテーマにした作品が増加した。3.11から5年経った2016年に公開された『君の名は。』でも、「彗星の直撃」という描写ではあれど、町がなくなったシーンの描写、あるいは受け取る側の感覚として、震災が念頭に置かれていた/想起してしまったのではないか。


 そして『すずめの戸締まり』では、Twitterの公式アカウントで注意喚起が行われているように、地震描写と緊急地震速報の警報音が頻出する。


 公開に先立ち、12分に及ぶ本編の冒頭映像が公開(現在はU-NEXT等の各動画配信サービスで視聴可能)されたため、すでにこの情報を知っている方も多いだろうが、ミミズの出現に合わせて人々のスマホで緊急地震速報の警報音が鳴り響くのだ。実際の警報音とは異なるものの、画面からこの音が鳴り響いた際の恐怖というのは、やはり精神的に来るものがある。この国に暮らす者が頭の片隅に置いていて「鳴らないでほしい」と思っているであろう“音”を使った演出――これは、日本的な感覚を意識的に物語に落とし込んできた新海監督の新たな方法論といえるのではないか。地震に対する恐怖は、昔も今もこの国に住まう以上は変わらない。そのことを強く思い知らされると同時に、本作のテーマが「場所を悼む物語」であることにも合点がいく。



『すずめの戸締まり』(C)2022「すずめの戸締まり」製作委員会


 地震を真正面から描くことは、当然ながら震災に向き合うことでもある。その意識は冒頭から明白で、幼少期のすずめが母親を捜して廃墟をさまようシーンでは、建物の上に船が乗り上げた風景が描かれる。この光景を目にしたとき、否応なしに東日本大震災が蘇ってくるのではないか。


 作り手としての「震災を描く」という宣言の表れともいえるシーンを経た後は現在のすずめの日々を描いていくが、周囲にいる人間が方言なのに彼女だけは訛っておらず、すずめが一緒に暮らしている人物を「環さん」と呼ぶことで、親との死別をにおわせる(その後、同級生との会話で環が叔母であることが判明する)。その後、草太と出会い日本各地の「震災を止める」ために閉じ師の活動に協力していくことになる――という流れだ。冒頭から末尾に至るまで、震災をテーマにした物語が展開していくのだ。





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