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『逆転のトライアングル』意地悪さ×共感性の名手が、エンタメを追求した野心作

Fredrik Wenzel © Plattform Produktion

『逆転のトライアングル』意地悪さ×共感性の名手が、エンタメを追求した野心作

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アカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞の3部門ノミネート



 日本時間2023年1月25日に発表された、第95回アカデミー賞ノミネーション。A24の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が最多10部門11ノミネートを果たし、Netflix『西部戦線異状なし』が9部門ノミネート、『イニシェリン島の精霊』が8部門9ノミネートで続いた。


 個人的な見解だが、今回は作家主義的映画×各国の作品に票が集まった印象だ。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の製作国はアメリカだが(『アベンジャーズ』シリーズのルッソ兄弟がプロデュース)、アジアにルーツを持つキャストが揃い、2022年版の『西部戦線異状なし』はドイツ、『イニシェリン島の精霊』はイギリスとアイルランドが中心に製作された作品。そして、スウェーデン・フランス・イギリス・ドイツ合作の作品が、作品賞・監督賞・脚本賞の3部門にノミネートされた。リューベン・オストルンド監督の『逆転のトライアングル』である。



『逆転のトライアングル』Fredrik Wenzel © Plattform Produktion


 『逆転のトライアングル』は第75回カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞しており、オストルンド監督は『フレンチアルプスで起きたこと』(14)で同映画祭ある視点部門の審査員賞(第67回)、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(17)でパルムドール(第70回)を獲得してきたため(2作連続のパルムドール受賞は史上3人目)、実績的にはなんら不思議ではない。


 ただ、『逆転のトライアングル』がオストルンド監督初の英語作品ということも要因であろうが――、いちファンとしては彼がついにアカデミー賞の主要部門にまで手をかけた感はある。前作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は外国語映画賞(現・長編国際映画賞)の1部門ノミネートだったことを考えると、大いなる躍進といえるだろう。ちなみに『逆転のトライアングル』は、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』でパルムドールを受賞した直後に制作発表されたそうで、2017年から動いていた企画だ(コロナによる撮影の中断もあった)。


 本稿では、オストルンド監督の『フレンチアルプスで起きたこと』『ザ・スクエア 思いやりの聖域』との共通点を中心に、『逆転のトライアングル』の魅力に迫っていきたい。





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