2023.03.22
その後のマリー・アントワネット
「当時の私はとても敏感でした。私は23歳で、この映画の主役でしたから、この映画が荒らされるのを見るのは苦痛でした。自分にとって本当に繊細なものであるこの作品を、人々が好きではないように思えたので、正直なところ、私の気持ちは傷つきました。本当に特別なものを作ったので、もっとみんなに愛されると思っていたのです」(キルスティン・ダンスト)*3
『マリー・アントワネット』はカンヌ国際映画祭でブーイングを浴びたことが伝えられている。ソフィア・コッポラによると実際にはプレス試写で見た数人のジャーナリストによるブーイングが、大ごとのように記事に書かれたとのことだ。外側のイメージによる噂話が描かれた本作が、マスコミによる誇大記事、不当な扱いを受けたことは、世界が18世紀からそれほど変わっていないことの証左なのかもしれない。本作は現在の評価において名誉を回復しつつある。ソフィア・コッポラは映画の「顔」であり、まだ若かったキルスティン・ダンストを批判から守らなければならないと強く感じたという。
ピーター・ボグダノウィッチによる『ブロンドと柩の謎』(01)でサイレント映画の名俳優マリオン・デイヴィスを見事に演じたことがあるように、『マリー・アントワネット』のキルスティン・ダンストには、その佇まい自体が映画に愛されているとしか思えないほどのシルエットの美しさがある。毎朝繰り返される「着替えの儀式」における、少しずつ変化していく表情。この時期の彼女にしかこの役はできない。原作者のアントニア・フレイザーは、イメージどおりの少女がそこにいたことに感激したという。
『マリー・アントワネット』(c)Photofest / Getty Images
ソフィア・コッポラは本作と同じエネルギーレベルを取り戻すのに15年かかったという。次作となる『SOMEWHERE』(10)は、『マリー・アントワネット』の反動だったと語っている。そして後年の言葉からは、仲の良い姉妹のように感覚を共にする二人が本作を誇りに思っていることが伝わってくる。
「数年前の上映会で娘と一緒に大きなスクリーンで見ることができたのですが、娘の目を通して見ることができ、彼女がどれほど夢中になっているかを知ることができて、とても嬉しかったです」(ソフィア・コッポラ)*3
「あの映画がその後の歴史物やテレビドラマのインスピレーション元になっているのは、とても面白いですね。『THE GREAT ~エカチェリーナの時々真実の物語~』(20〜)や『女王陛下のお気に入り』(18)もそうですね。マリー・アントワネットがいなかったら、ヨルゴス(・ランティモス)はあの映画を作らなかったと思うのです」(キルスティン・ダンスト)*4