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『マリー・アントワネット』アイ・ウォント・キャンディ!パーティーの終わり

(c)Photofest / Getty Images

『マリー・アントワネット』アイ・ウォント・キャンディ!パーティーの終わり

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ファッションショー



 『マリー・アントワネット』において「お引き渡しの儀式」が象徴的なのは、衣服を脱がされ、衣装をチェンジするという展開が、少女から大人の女性になっていくプロセスを通過儀礼的に描いているだけでなく、これからマリー・アントワネットがヴェルサイユ宮殿で披露する「ファッションショー」のメタファーにもなっているからだ。マリー・アントワネットは、まるでファッションショーのモデルであるかのように着せ替えさせられる。


 マリー・アントワネットがソファに座り、召使の女性に靴を履かせてもらう本作のファーストショットが、ギイ・ブルダンのファッション写真へのオマージュであるように、ソフィア・コッポラにとってファッション写真、広告写真は大きなインスピレーション元になっている。特に初期のソフィア・コッポラは静止画に動きを与えることに執着していた。



『マリー・アントワネット』(c)Photofest / Getty Images


 たとえば『ロスト・イン・トランスレーション』のランジェリー姿でベッドに横たわるシャーロット(スカーレット・ヨハンソン)の有名なイメージは、ジョン・カセールの描いたフォトリアリズム絵画からインスピレーションを得ている。他にもソフィア・コッポラの作家の刻印ともいえる草原の少女のイメージは、ウィリアム・エグルストンの写真からイメージを得ている。これらのイメージと映画との関係を分析するスザンヌ・フェリスの「The Cinema of Sofia Coppola: Fashion, Culture, Celebrity」は、ソフィア・コッポラ研究においてバイブルともいうべき重要な書物だ。


 ファッション写真に動きを与えるという面において、本作でマリー・アントワネットがヘアメイクへの絶対の信頼を寄せているレオナール・オティエ(ジェームズ・ランス)の存在は興味深い。ヘアドレッサーのレオナール・オティエは、マリー・アントワネットの依頼で「Journal des Dames」というファッション誌を復刊させた人物でもあるのだ。


 ソフィア・コッポラは画家になることを諦め、デザイナー、写真家、そして映画作家として飛躍していった経歴の持ち主だ。『マリー・アントワネット』は、ファッション写真や静止画に創造のインスピレーションを得てきたソフィア・コッポラという映画作家のコアに触れる作品といえるだろう。





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