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『A.I.』アンドロイドはブルーフェアリーの夢を見るか? ※注!ネタバレ含みます

(c)Photofest / Getty Images

『A.I.』アンドロイドはブルーフェアリーの夢を見るか? ※注!ネタバレ含みます

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開発地獄に陥った『スーパートイズ』



 キューブリックは、1969年に発表されたSF小説『スーパートイズ』の映画化に70年代から取り組んでいた。増え続ける人口を抑制するため、政府の許可なしでは出産することが許されない近未来。出産許可証を持たない夫婦のために、子供型アンドロイドのデイビッドが開発される。自分がA.I.であることを知らないデイビッドは、必死に母親の愛を求め続ける。家族とは何なのか、愛とは何なのかを描いた傑作短編だ。


 彼は原作者のブライアン・オールディスと一緒に、シナリオ作りを進めていく。かつて、アーサー・C・クラークと共同で『2001年宇宙の旅』の脚本を開発したように。だが、プロジェクトはさっぱり進展しない。キューブリックが『シャイニング』や『フルメタル・ジャケット』(87)を製作している間も、オールディスはコツコツとシナリオ作りを進めるが、10年以上の月日を要しても開発地獄から抜け出すことはできなかった。



『A.I.』(c)Photofest / Getty Images


 1989年にオールディスは解雇され、1990年にイギリスのSF作家イアン・ワトソンが新しいライターとして雇われる。それでも映画化への道筋はなかなか見えてこない。エイフェックス・ツインやビョークのPVで知られるクリス・カニンガムを視覚効果スーパーバイザーに招聘し、ゴム製の小さなアンドロイドを製作したこともあったが、結果は芳しいものではなかった。


 スピルバーグも『スーパートイズ』の進捗について、キューブリックから話を聞いていた。それどころか、自宅に専用のファックスを設置して、送られてくる脚本にコメントするアドバイザー的な役割も果たしていた。それでも、ある日キューブリックから「素晴らしいアイデアがある。私がプロデュースして、君が監督するんだ」と提案を受けた時は、さすがに面食らったという。「スタンリー、僕はあなたが監督すべきだと思うし、望むなら僕がプロデュースするよ」と丁寧にそのオファーを断ると、キューブリックも「そうか。君が望まないのなら、私が監督するよ」と返した。


 だが、スティーヴン・スピルバーグ製作、スタンリー・キューブリック監督という夢の組み合わせが実現することは叶わなかった。その後キューブリックは『アイズ ワイド シャット』(99)の製作に取り組み、1999年3月7日にこの世を去ってしまう。享年70歳。完成した映画の試写会から5日後のことだった。





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