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『コングレス未来学会議』AIが生み出すデジタル俳優、その功罪(前編)

(c)Photofest / Getty Images

『コングレス未来学会議』AIが生み出すデジタル俳優、その功罪(前編)

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ディープフェイクの有効的活用



 しかし、AIをうまく活用することで、新しい利用法も見いだせる。例えば、ドイツのマックス・プランク研究所の技術を応用し、映画監督のスコット・マンが2021年に設立したFlawless社のサービスTrueSyncは、別言語に吹き替えられた映像を、セリフに合った唇の動きと表情に修正するというものだ。現在は実写に対して行われているが、手描きアニメやストップモーション・アニメにも施せば、完璧なリップシンクも後処理で可能になるだろう。


 またディープフェイクそのものを、映像技術として活用する方法も考えられる。例えば、チャーリー・カウフマンが監督したストップモーション・アニメ映画に、『アノマリサ』(15)がある。この作品の主人公は、他人の顔や声が全て同じに感じられる「カプグラ症候群」という現象に悩まされている。この症状を表現するため、カウフマンは実写のように精密に作られたセットや、微妙な表情が表せる人形の制作を要求した。しかし、あまりにも予算が掛かり過ぎて、スタッフのギャラやスタジオの経費が払えず、制作は度々中断した。(批判を承知で言うならば)こういった題材には、ディープフェイクが向いているのではないだろうか。(*9)


『アノマリサ』予告


 つまり生成AIなどと同様に、きちんとしたルールを定め、報酬などの問題も解決した上でならAIの活用はプラスに働くと考えられるのだ。


*9 実例として、NHK総合「よるドラ」で放送されていたドラマ『きれいのくに』(2021)では、Shamookと同様にDeepFaceLabというAIツールを用いて、同じ顔の登場人物を登場させている。



後編に続く



文:大口孝之(おおぐち たかゆき)

1982年に日本初のCGプロダクションJCGLのディレクター。EXPO'90富士通パビリオンのIMAXドーム3D映像『ユニバース2~太陽の響~』のヘッドデザイナーなどを経てフリーの映像クリエーター。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞。VFX、CG、3D映画、アートアニメ、展示映像などを専門とする映像ジャーナリストでもあり、映画雑誌、劇場パンフ、WEBなどに多数寄稿。デジタルハリウッド大学客員教授の他、女子美術大学専攻科、東京藝大大学院アニメーション専攻、日本電子専門学校などで非常勤講師。主要著書として、「3D世紀 -驚異! 立体映画の100年と映像新世紀-」ボーンデジタル、「裸眼3Dグラフィクス」朝倉書店、「コンピュータ・グラフィックスの歴史 3DCGというイマジネーション」フィルムアート社



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