2023.11.28
『コングレス未来学会議』(13)は、俳優のデジタルクローン化についての問題を、映画俳優組合ストの10年も前にテーマとした作品だった。しかしその後半は、予想もしない展開になっていく。人間の想像力の限界に挑戦するような幻覚的イメージが、洪水のごとく溢れるアニメーションになるのだ。
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あらすじ②
20年後。それなりに歳を重ねたロビン・ライト(ロビン・ライト本人)は、2013年モデルのポルシェ911を走らせていた。ミラマウント社が開催する未来学会議に出席するためだったが、途中のゲートで止められる。そこにいた係官は、「アブラハマシティはアニメーション専用地域だ」といって、薬物の入ったアンプルをロビンに渡す。すると彼女自身を含めた全てが、狂ったようなアニメーションになっていく。
上空には巨大な宣伝用飛行船が飛んでいた。そのボディには、新作映画『エージェントR:ストリートファイター』の予告編が映し出されている。それはCG化されたロビンが主人公の、スーパーヒーローもの(『博士の異常な愛情』のパロディも登場する)だった。彼女がミラマウント・ホテルにチェックインすると、至る所に設置されているディスプレイにも同じ予告編が流れていた。
ロビンは自宅に残してきた息子アーロンに、眼鏡型の通信機で話しかける。彼女は「アニメ化された私を見せたいわ」と言うと、アーロンは「映画の予告編を観た人に気付かれた?」と質問を返す。しかし誰一人として、老いた彼女がエージェントRと同一人物であるとは気付かない。
彼女は再契約のために、CEOであるジェフの部屋を訪れると、ドアの前でトム・クルーズが順番を待っていた。現在の彼は、アフリカでボランティア活動をやっているのだという。ロビンが入室すると、ジェフは「映画なんて過去のものだ。この世界はもうすぐ消えてしまう。これからの観客は、新会社ミラマウント・ナガサキの製薬部門が開発した薬を摂取し、各々の頭の中で自由な選択が可能になる。ドラマ、童話、ポルノ、アート、コメディ、SF、ゾンビなど、何でも可能になるのだ」と、彼女が化学物質になる契約書へのサインを求める。
『コングレス未来学会議』(c)Photofest / Getty Images
やがて派手な未来学会議が始まり、ミラマウント・ナガサキの社長リーヴ・ホブスが、新薬の素晴らしさを語る。そして自らクリント・イーストウッドやキリスト、さらにエージェントRに姿を変えてみせ、スペシャルゲストとしてロビンをステージに招き入れる。しかし彼女は「私には障害を持つ息子がいます。製薬会社だったら、こういう人々を救おうと考えなかったのでしょうか。皆、目を覚まして!私は破滅のシンボルよ!」とスピーチした。怒ったリーヴは、ボディガードにロビンを取り押さえさせ、ホテルの外へ追い出す。
その時、潜んでいたスナイパーがリーヴを狙撃する。これをきっかけとしてミサイルが撃ち込まれ、ミラマウント・ナガサキによる支配を拒む反乱軍が乱入して、ガスを散布する。ロビンは、ディランと名乗る謎の男に連れられ、ホテルの地下へ逃げ延びる。地下通路を降りて行く途中で、ロビンは反乱軍の中に娘サラの姿を見付ける。
ホテルの地下では重役たちが、空気式のソファーに座って優雅に水に浮いていた。ディランは重役からソファーを奪い、ガスで朦朧とするロビンを座らせる。ディランは、「元ミラマウントのアニメーターで、ロビン・ライト担当の責任者だった」と言う。彼は彼女のことを、事細かに調べ上げていた。だが彼の身体は、みるみる植物になっていき、その下ではゴキブリたちがポーカーを始める。
ロビンはいつの間にか眠っており、『エージェントR:ストリートファイター』の夢を見ていた。気が付くとすでにディランの姿はなく、水中からジェフが現れ、彼女のスピーチの件をとがめる。そして彼女は囚人服を着せられ、ホテルの屋上にいた。軍服で現れたジェフが、ロビンに希望する処刑方法を訊ねると、彼女は「早く幻覚から逃れたい」と言って銃殺を選ぶ。
彼女は目を覚ますとベッドの上にいた。その周囲には医者と、興味深げに観察するインターンたちがいた。医者は、「彼女は、アブラハマ革命の時に幻覚誘発剤を吸引し、4か月間に渡り自分の体験すべてが幻覚だと思い込んでいる。救急隊員にも銃で頭を撃ってくれと懇願したそうだ。今の医学では回復の見込みがない」と診察し、ロビンは治療法が発見されるまで、液体窒素で凍結されてしまう。